観月

『きこえるのじゃ』
むむむ……?
もしや?
このごろはうれしいことに
心地良い陽気が続いて
大人にも子供にも
誰にとっても過ごしやすい日で
助かると思っていたら──
こういうときはやはり
せんたくものをかぶっておばけのふりをする
子供たちのほかにも
浮かれてそこらをうろうろしだす
困ったものも出てくるもの。
見よ!
ついにやってきた
北のほうからくる冷たい風──
みんなを怖がらせる
わるいやつじゃ!
このごろ油断している
すきまだらけの袖や襟元に忍び込んでくる
おそろしい冷気。
人が身をすくめるのを
楽しんでいるよう!
急な寒さに人は逃げまどって
こたつの中に飛び込み
春風姉じゃのスカートに隠れて
家の中はおおさわぎ。
まったくすべては
北風のしわざ。
え?
普段もそんなに変わらないように見える?
まあ、ともかく
この寒さでみんなが体調を崩さないといいが
それが一番心配になるな。
七草がゆの記憶も新しい頃、
またおかゆが続くのも物足りない。
しかも最近は
新しいお菓子のチェックも熱心な子が増えているよう。
冬場に体力をつけるのは
大事なことだからの。
うむうむ。
兄じゃも好きなものをたくさん食べたりするといいぞ。
何やら春風姉じゃたちは
兄じゃの好みを知りたがっている──
わらわは兄じゃと食べられるなら
なんでもおいしく
もりもりいただくぞ。
姉じゃたちにもそう伝えてよいからな。