観月

『おやくめ』
いそがしい
いそがしい。
なにしろ10月も半ばを過ぎ
彼岸と此岸がつながるこのごろは
いつも大変なのじゃ。
そう、
蛍姉じゃを囲んで
楽しいハロウィンの支度を続け
かわいく仮装ができなければ
せっかくのにぎやかで大騒ぎのお祭りに
乗り遅れてしまうからの。
子供はいつも楽しいことを探して
駆け回るもの。
みんなではしゃいでとびはねて
歌い踊るためならば
苦労は厭わぬようにできている。
まだ針を持つのが危ない小さな子たちも
伸ばした巻き尺をずるずる引っ張り
長い竹定規を天井に届くほど勢いよく振り回しながら
家族の丈を計測しようと全力でぶつかってゆく。
時には数字を正確に書きとめ
時には持ち慣れぬチャコールペンで
お祭り騒ぎの手助けをしたくてたまらぬのじゃ。
えっ?
このところ怪しい気配は
見かけなかったかと?
吹雪姉じゃが気にしていた?
うーむ、あまり思い当たらぬな。
てっきり舶来のお祭りでは
邪鬼も小鬼もたいしたことはできぬであろうと
注意してはいなかったが。
ああっ、まさか兄じゃは見ていたのか?
このまえお山へお勤めへ向かう時間がきたのに
つい最近にしては珍しく日向がぽかぽかしておったので
縁側でのんびりしていた時のことを。
しかし、そのように吹雪姉じゃが何かを感じているというのであれば
わらわもしっかり
目をぱっちり開いておこう。
そこまでまずいものが近づいているのであれば
わらわがちょっとよそ見をしていても何かを感じるはずで
おそらく何もないと思うが。
そうじゃ、霙姉じゃの用意してくれたかぼちゃのお菓子が
この前の日向の時に食べきれなかったぶん
しまっておいたのを思い出したぞ。
なーに、危険な気配も何もなさそうだから
食べ過ぎて動けなくなっても不都合はあるまい。
よく食べたらまた兄じゃを追いかけ
飛びかかっては、背丈を測るふりの遊びをしてもらって
まったく、うららかな秋はこんなに忙しいものであったかな。
遊び疲れて夜長を眠りに落ちて過ごすまで
今日も駆け回っていなければもったいないな!