『だっこぐま』
ふむ。
天気のいい日は
散歩に行く、
洗濯をする、
バトミントンをしたり
よだれをたらして
我が家の長男によじのぼる──
こういった生活が
ごく一般的なものとして存在するようだな。
終わらない繰り返しに見える
小さな星の小さな生物の営み。
やがて避けられない終わりを知り
寂しく思う前に
ただ繰り返す愛おしい日常を楽しんでおこう。
こんなにのどかな日差しの中にいると
ずっと続くと思いそうなくらい
あたたかで優しい。
やっと迎えた週末を
そんな気分で過ごすのもいいことだな。
おや、向こうの日なたにいるのは
ブラシできれいにしてもらって
気持ちよく日光浴を楽しんでいる
ぬいぐるみのクマではないか。
オマエもこの穏やかな景色を見つめる仲間か──
何を思うのだろうな。
あんがい、空の彼方を遠く思うような
哲学的な思索か
ただ毎日の重要なイベントの一つとなる
おやつの時間の幸福を思うか
それとも、もしかしたら──
人がだれかを愛するために
あるかのように
ぬいぐるみもまた
誰かに抱っこされることだけを待ち
そのために今もここにあると
信じているのかもしれないな。
せっかくきれいにしたものを
いじるのもどうかと思うが
おそらくぬいぐるみには生まれつきの性質として
どうしても抜きがたく、
人の抱っこを誘うようにできている。
こればかりは否定のできないこの世の理──
ああ、申し訳ない気持ちが沸き上がっても
陽光の香りをたっぷり吸い込んだぬいぐるみに
誰より先に一番に触れる誘惑に
人は抵抗できない。
そういうものだ。
あきらめて素晴らしい感触を喜ぶ以外に
私たちのできることはないのだから
全力で楽しむ──か。
ふふ、それもいいだろう。