『変身』
この宇宙は広大で
人の知識の及ばぬもの、
どれほど長い時を重ね過ぎてさえ
まだ見ぬものがたくさんあるという。
世界には──
かわいいメイドさんが存在して
女の子であればだれでも
そんなふうになれる可能性はあると
蛍は言う──
限りのない宇宙、
熱的死を待つまでの長い時間。
そこにはきっとあるのだろう──
そう、あの言葉の通りの景色が。
霙お姉ちゃんでも
きっと立夏ちゃんの部屋を
きれいに片づけて
女の子らしさを見せつけ
お兄ちゃんに惚れ直してもらう
時が来る、と──
蛍はその時がいつかは言えないが
必ずそうなることだけは
知っているのだという。
それはどうやら
今年のことではなかったようだな。
繊細な仕事があれば
向いていそうな子に頼み──
力仕事があれば
人を集める。
立夏たちの部屋を見回し、
これは私の仕事ではないと見抜く──
本当にその場に必要な人を呼ぶべきだと。
そうすることで
部屋はきれいになっていくのだ。
蛍に仕立ててもらった
仕事着も──
あまり役立てないまま返すことになってしまった。
うわさを聞いた蛍は
私を待っていて──
そして、手渡してくれたのだ。
執事の服だという。
立夏の部屋掃除の仕事は
終わったのだけど──
この服を着るにふさわしい活躍だったそうだ。
オマエも見ていたか?
星々の体現する悠久の気配を
誰もが感じ取るものだが──
蛍のお手製のメイド服を身に着けながらも
どちらかというと執事みたいに見える
20人きょうだいの次女というのは
ひょっとすると、この現在の地球の
この場所でしか見られない
珍しい事件だったかもしれないぞ。
蛍があんなに喜ぶんだから、宇宙の歴史に刻まれるほどの
ことだったに違いない。
これからは──
のんびりおもちでも食べて
きれい好きな家族に囲まれ
大掃除と無縁の年末を過ごす事件も
きっと長い時の果てにいつかは訪れる。
それが明日くらいにはやってきたらいいだろうなと考えている──