海晴

『事件解決』
それにしても
昨日はびっくりしたわね。
まさかダイエットのためにおやつをがまんした立夏ちゃんが
おなかが空きすぎたあまりに
サイズが合わない服の山に埋もれて
死んだふりをして遊んでいたなんて──
おまけにみんなはびっくりしすぎて
あーちゃんはそこに山があるからとばかりに登っていくし
落ちている服を見かけた夕凪ちゃんはというと
こちらはサイズが大きすぎて合わないのに
着てみたくなってぶかぶかの服を合わせて喜んでいるし
散らばった服をかきわけたら
かくれんぼのいい場所を見つけたさくらちゃんが丸くなっているし
ただお下がりをもらうだけのイベントが
元気なきょうだいの中にいると
こんなにもおおごとになるものだから
まったく子供っていうのはいつでも意外性のかたまりね。
ぜんぜん退屈しない日常もいいけど
でも、立夏ちゃんも来年は中学生になるんだから
もう少しはおしとやかな美少女に変わって行くのかしら?
なにしろ私の愛する妹だから
これからどんどんきれいになって
ママから芸能事務所に誘われるのは間違いないし──
ちょっとくらいウエストが合わない服を見つけたときの
あきらめ方なら場数が違うもの。
きっとその時の心構えを教えてあげられると思うわ。
どうか立夏ちゃんが
これからも変わらず自分なりの歩き方で毎日を踏みしめて
ゆっくり大人になっていけますように──
早く素敵な理想の姿なりたくて
じたばたしているだけで、
それしかできなくてもどかしいと思っていた
あの頃の自分を思いながら
お姉ちゃんはいつも見守っています。
困ったことがあったらいつでも助けてあげられるようにと。
うーん──でも私も困ったときの答えをそんなにたくさんは知らないもの。
すぐ隣で同じようにじたばたしてあげることしかできないかな?
それでもよかったら。
一緒に同じ時間を過ごしていこうね。
なにしろだんだん暖かくなって
今日は蛍ちゃんが冬の間に仕入れて使い切れなかった酒粕
ぱーっとぜいたくに
あったか甘酒パーティを開催するんだって!
こんな日は家族がいてくれなくちゃ楽しみきれないもの。
長く厳しい寒さもゆるんで
もう少し朝晩の寒さを乗り切っていけたら──
今日のにぎやかな騒ぎがこの冬最後のイベントになるのかな。
なにしろ明日は──
ああっ、あんまり期待するようなことを言ってプレッシャーをかけたらいけない!
でも、どきどきしているって言わずにはいられない!
どんな贈り物でもきっとキミの気持ちが届くはずです。
こればっかりは一緒にじたばたするわけにはいかないね──
お姉ちゃんは信じて待っています。
いつもはあんまり甘すぎるものは得意じゃないけど
せっかくの贈り物は
どれだけ甘くてもかまわないと思うよ!