亞里亞BDSS

『いろいろあるけど年に一回のBDSSはいつも通りやってみようみたいな感じ』
「兄や様、今年は亞里亞様のお母様が、誕生日プレゼントに兄妹で結婚できる法律を作ろうとしています」
「よかった、いつも通りだ。それでオチは、やっぱり法律を変えるなんて無理で結婚できなくても兄妹だからこれからも一緒だよねってなるんでしょ」
「いえ、法律はもう変わることで決まったのですが」
「決まっちゃったかあ」
「急なことでいろいろ大変なことも多いので、法律も含めて一からすべて生活環境を作れる、兄ひとりと妹12人だけで暮らせる町をひとつ一緒に誕生日のプレゼントにするとのことです」
「まあ、没ネタSSでは地球と同じサイズの星ひとつとか、パラレルワールドひとつに兄妹みんなで住むみたいなこともたくさんあったからそれくらいならいいよ」
 いいかなあ。
「フフ……星やパラレルワールドくらいなら……兄くんが望めば、私の力でも用意できる……」
 なんか僕の影から聞きなれた声がするし。
「それだけの力があっても結婚できるようには今までできなかったの?」
「……原作が元々そうだったからね……」
 やっぱり原作は強いなあ。星ひとつとか言っておいていまさらの気がするけど。
「では兄や様、亞里亞様を呼びますので一緒に町を作りに行ってみませんか」
「さらりととんでもないけど、それはそれとして亞里亞は今どこかなあ」
「……私の力があれば……亞里亞ちゃんを呼ぶくらいならできる……」
 影がむくりと膨らんで亞里亞が出てきた。千影の能力を発揮する方向それでいいのか。
亞里亞大丈夫? 怖くなかった?」
「なんで?」
 大物だ。亞里亞がいいならいいか!
亞里亞、町作り楽しみだね!」
「わーい」
 さらりととんでもないけどいいや。
 さて、あっちのほうで春歌と鞠絵が話しているのを聞くと、どうやら学校を作る準備をしているようだ。さらりととんでもない……
「国語、算数、理科、社会と、それから体育は衛ちゃんに任せて……」
 どうやら、本格的になって来ると結構大変そうだ。それを楽しそうに見ている雛子もいる。
「友達ひゃくにんできるかなあ」
 兄ひとりと妹12人だからね。なかなか難しそうだね。
「よかったね亞里亞、学校だって」
「わーい。友達百人なの」
 亞里亞が期待してるならがんばる……僕が分身の術を使うとか鈴凛にクローンを作ってもらうとかで。こういう時にギャグSSは便利だな。
「学校と言えば怪事件デスね」
 またその横で話を聞いている無茶苦茶な子がいる。
「わーい、怪事件なの」
 亞里亞が期待しているなら……いや、でもやっぱりちょっと考える時間をもらいたいよ。
 それにしても、大変そうだけど春歌と鞠絵ならしっかりしているから安心だ。
「国語の教科書は兄と妹の恋愛のお話を多く取り入れましょう」
「社会の歴史では兄妹で結婚して幸せになった話を教えますわ!」
 安心だといったそばから。そして話を聞いている雛子と亞里亞もそんなに喜んで……喜んでいるならいいのか?
「推理の授業ではシャーロックホームズのテキストも使いましょう」
「推理の授業はあまり聞かないなあ」
「兄チャマと仲良くなるためだから、仲良しの授業かな?」
「ツッコミがしにくいほのぼのした方向を攻めたな」
 この流れだと、衛の体育も少し心配になって来たぞ。
「雛子ちゃんや亞里亞ちゃんたち小さい子もいるから、ボクのペースに合わせないでみんなが楽しめるようにがんばろう」
 よかった、今回は野生児キャラじゃないかわいい衛だ。僕はいつもどんなSSを書いているんだ。
「体育で本気を出せない分、休みの時はあにぃにいっぱい、疲れきるまで遊んでもらおうっと」
 大丈夫かな。体力キャラが出すぎてないかな。まだ全然ほのぼのしてる発言で収まっていると思うことにしよう。
亞里亞もお休みのときは兄やに遊んでもらいたいな」
 亞里亞なら……いやでも亞里亞も結構なかなかだったりする時もあるな。お馬さんごっことか。
「ふうふう、みんなの分のお料理を今日も作っていくんですの」
 白雪も大変だね……いや大変すぎない?
「あっ、にいさま! 姫ははりきっていますの! にいさまにおいしいものを食べてもらうために、街にたくさん畑を作るところからはじめるの」
 大変すぎない? まあ僕が分身の術とかクローンとかで……
鈴凛ちゃんがたくさん用意してくれた、農作業お手伝いメカ鈴凛ちゃんのおかげですの」
 そっちの方向のギャグ展開もあって助かった。亞里亞が喜んでいるのはおいしいものを作る農作業が楽しみなほうであって、量産型メカ要素ではないよね?
「じゃあ、そろそろ休憩だし、みんなでラジオを聞く時間ですの」
 ラジオもあるんだ。もうだいたい次の展開はわかった。
「♪どこかにいいことないかな~」
 聞きなれた曲が流れてきた。
「ようこそ、お兄ちゃん。可憐です」
「花穂だよ!」
 何か微妙に聞きなれているようなそうでないような気もするけど、いいだろう。
「花穂ちゃんは町ができたら、みんなを応援するお仕事をするの?」
「学校でチアリーダーの部活動をしてみたいな!」
 ちゃんとしたラジオじゃないか。
「今回のゲストは、咲耶ちゃんだよ!」
咲耶ちゃんはおしゃれだから、この町では景観を重視した都市計画のお仕事をしているんですよ」
 おしゃれの範囲かなあ!? 咲耶すごいな!
「そうなの。お兄様と結婚できる教会の建設などを今は進めているところよ」
 咲耶もはりきってやっているな。
「可憐ちゃんは、どんなお仕事をする予定なの?」
「え、お兄ちゃんのお嫁さんですよ」
 今回のSSだとみんなでは。まあいいや。
「そして今回のラジオでは、みんながもっと喜ぶ、もう一人のサプライズゲストとして」
 おや? 誰だろう。
「お兄ちゃんをさらって連れてきちゃいます!」
 そうか、サプライズゲストのサプライズは僕に対してだったのか。
 でもまさか、そんなさらうだなんてどうやって……待てよ、そういえば少し前に……
 ポワポワポワ(回想はじまり)
「アニキ、おこづかいちょうだい!」
「しょうがないなあ。今度は何を作るの?」
「それはね、大好きなアニキを私のところにさらって連れてきちゃうメカだよ!」
「こやつめハハハ」
「ハハハ」
 ポワポワポワ(回想おわり)
 あの時のあれだ……
 別に冷静に考えたら、さらわれて出演することになっても何も問題ないんだけど。そして亞里亞が喜んでいるのはゲスト出演であって、さらってしまう方向性ではないよね?
 今日も、大変なことが多くたって、みんなもそれぞれのお仕事をがんばって新しいことをはじめようとしている。いろんなことがあるけれど、こうして進んでいけるならきっとこれから先も大丈夫、心配することなんて何もないのだ。よし、きれいにまとまったのでオチはこれでいいとしよう。
「兄や様、たったいま亞里亞様のお母様から連絡がありましたが、町だけではなくて星ひとつとパラレルワールドひとつも用意できたのでお任せしたいそうです」
 オチはあれでよくなかった……
「千影はまた、はりきりすぎだよ」
「私はまだ……何もしていないけど……」
 今回のラスボスは亞里亞のママだった珍しいパターンだったね。