亞里亞BDSS

衛府の十二忍(元ネタの話はほとんど出てこないので知らなくても問題のない安心仕様です。じゃあなぜこのタイトルなのだろう?)』

 


 たぶんBDSSっぽい内容にならない予感が今の時点でなんとなく漂っているので最初にお祝いしておくことにしよう。お誕生日おめでとう亞里亞
 そんなふうに妹のお祝い事に思いを馳せていたら、まるでそれに合わせたようにじいやさんが家のドアを叩く。ちなみにこのサイトでは昔からシスプリSSはゲーム版準拠の設定で書いているので今回も僕は一人暮らしで、今のところは家の中に誰もいないところからのオープニングというわけだ。ここに12人集まる展開になりそうだね。
「……フフ……つまり私もシスプリ1のエンディング準拠ということになり……やりたい放題できる設定を取り入れることができるね……」
 まあ千影はどれに準拠しても大変なことになるね。あと家の中に誰もいないって言ったばかりだから遠慮なく入ってこないで一言だけでもほしい。入るって言い方したけど入口っぽいところが開いた気配はさっぱりなかったが、まあどこの千影に準拠してもそうなるから細かいことを考えるのはやめよう、話が進まないから。
「大変です兄や様! 妹のみなさんが兄や様に会いたい気持ちで鬼に変わっていく事件が起こっています!」
「ああ昔はよくそんな内容のSSあったなー。たくさん読んだ気がするよ、懐かしいね。よくあることだから大丈夫だよ」
「兄や様にとっての大丈夫の定義とは!?」
「あと千影はもともとこんな感じだから気にしなくて大丈夫だよ」
「大丈夫の定義!」
 じいやさんも人生に必要な定義を揺るがされることが多くて大変そうだけど12人の妹の作品という時点であきらめたほうがいいかもしれない。
「もともと恋する乙女は異形に変わりゆくもの……古来動かすことならぬ定めじゃ」
 観月もすっかり落ち着いた様子で言う。千影じゃなくて観月なの! 言おうとしたことを取られた感の千影がとりあえずかわいいのでといった感じで観月を撫でてあげているけど今日はシスプリSSだからね!? 日記のほうでよろしくね!?
「明日の当番をもらってもいいかの?」
 今のローテーションだと氷柱・小雨・虹子に先に順番をあげたいね。ということで千影が観月を連れていくそうなので任せることにした。ちょっと不安だけどまあ観月はしっかりしているから大丈夫か……どうでもいいけどサンシャインの最初の自己紹介でマルちゃんも達観している感にもしやと思ったけど別にそんなことは全然なくてとてもかわいくて安心したよ。小雨のほうが近い感じかもしれないね。
「とにかく鬼になるんだっけ? 昔のSSだとだいたいバッドエンドだったけどまあギャグSSだから次までにはみんな生き返るからいいと思うよ」
「兄や様はバッドエンドを回避する意志を捨ててはいけないと思います」
 バッドエンドで面白いSSもたくさんあったのに……まあ今日はがんばるよ。やっぱりBDSSっぽくなりそうにないけど。
「しかし鬼になるといってもどんな感じなんだ?」
「お兄ちゃん、見てください。可憐お兄ちゃんに会いたくて鬼になって会いに来ちゃいました!」
 ハロウィン衣装の流用っぽい感じのかわいい鬼が遊んでもらいたくてやってきた。
 ははあ、だいたいつかめたぞ。
「つまり咲耶ラムちゃんのコスプレでやってくるわけだな。その格好でドキドキさせようと距離を近づけてくるわけだな」
「ぎくっ」
 電柱の向こうで聞きなれた声がする。
「意外性も恋の戦略……お兄様に見破られたのは残念だけど、ますますラブだわ! 見ていなさいお兄様! 次はお兄様が敗れる番よ!」
 露出度が多い恰好のまま去って行ってしまった。同じ電柱に隠れてぎゅうぎゅうはみだしていた四葉が怪盗クローバーの姿で見送っている。隠れる努力をしようよ。あと仮装をSSの内容に合わせる努力をしようよ。
「フハハハ兄チャマ! ちょっと汗かいたのでお水ある?」
「はい」
「ありがとう! ふー。フハハハ兄チャマ! 可憐ちゃんかわいいデスね!」
「騒がしくしないと生きていけない生き物か何か?」
 知ってたけど。可憐かわいいよね。
「今日は可憐ちゃんと咲耶ちゃんが鬼になって兄チャマをおどかしちゃおうとしていたので、四葉もヤッター楽しそうって考えたんだけど」
「うん、それでなぜそうなった」
イングランドの歴史ではゴブリンもコボルドも鬼の仲間。しかもフェアリーやコティングレーの妖精も同じ仲間だから、四葉ひょっとしてかわいいままで出てきてもだいだいフェアリーでいいのかな? と思ったのデス」
 まあイギリスのほうだと妖精も人をだましたり子供をさらったりすると聞くけど。四葉はマントを広げたり動作が派手だからさらったりとかだましたりはあんまり得意じゃなさそうだね。とは言いにくい。
四葉はあんまり得意じゃなさそうだね」
 言いにくいけど言えちゃった。四葉はどんなことでも話しやすい子だよね(意味が違う)。
「うわーん! 兄チャマが鬼だったという落語っぽいオチを使ったの! 四葉、日本らしさを取り入れることを忘れていたためにこんな反撃を!」
「そんな深い考えはなく、ただ四葉が面白いなあというだけだった」
「もっとひどーい! かわいいじゃないの?」
四葉ちゃん、かわいいですよ」
「フフ……そう……かわいいよ……」
「そうだよね、四葉はかわいいよ。かわいいんだけど……なぜだろう?」
「うわわーん兄チャマが一言よけいなのー! 可憐ちゃんが好評だったみたいなので、兄チャマは本格的な鬼に近いのが好き、メモメモ」
 めげないなあ。あと可憐もそんなに鬼ではない。四葉がまるっきり鬼ではないというだけだ。
 そこへどっしどっしと本物っぽい鬼がやってくる。え!? 誰!?
「わあー兄チャマが好きなものすごいのが来たデス」
「やりすぎだよ! 天を衝く高さだよ! メカ鈴凛のバージョン違いとか……にしては筋肉の質感がすごいし……あ、衛」
「あにぃがひどい!」
 すぐ後ろでかっこよくソシャゲ的な方向に男装っぽい鬼に仮装していた衛に気づかなかった。ごめん。
「兄チャマはひどい。メモメモ」
「メモしている場合じゃなさそうな気がしてきたけど」
 衛をフォローするのと筋肉感すごい鬼から逃げるのとどっちを優先したらいいんだろう。
「あ、そうだ。衛はこんな仮装の時くらい女の子っぽくかわいくしようって咲耶に協力を仰ぐ展開だ。咲耶が戻ってきた後に相談したらいいよ」
「あにぃもボクが女の子っぽいほうがいい?」
 いい雰囲気になってきたので大成功と言える(FFTみたいな口調で)。僕がその勇気で励ましたので衛の元気は大成功したと言える。といいな。
 鬼のほうは謎だといえる。どちらかというとオウガバトルだし。
「えーんお兄ちゃま!」
「まさかの花穂!」
「そこで滑って転んで、道に落ちていた鬼の着ぐるみに入っちゃったよぉ」
「そうはならんやろ」
「なっとるよ! お兄ちゃま!」
 花穂が着ぐるみを脱ごうとしているのか生粋のエンターティナーみたいな動きをはじめる。
「こんな花穂になっちゃったらもうお兄ちゃまの応援できないよ……」
「何を言ってるんだ、どんな姿でも花穂の応援は変わらないよ!」
 大成功したと言える。
「そうかなあ……」
 あんまり大成功していなかったと言える。花穂が応援してくれたらどんな姿でもいいのは本当だよ! メタトンみたいな動きもこれはこれで元気が出るよ! あっ首も伸びるの。そっちもなの。とりあえず千影が治せるそうで連れて行ってくれた。魔王の娘設定がまさかの場面で生きたよ。
「じゃあ千影と花穂と、それから咲耶が戻ってくるまでここで待機かな。それともみんなを探しに行ったほうがいいのだろうか」
 亞里亞も心配だ。じいやさんに聞いてみる。
亞里亞様は……」
 亞里亞のことで言いよどむ様子がある。
亞里亞がどうなったの!?」
 亞里亞は僕の大事な妹だ!
 亞里亞がどうなったとしても助けなければ!
 亞里亞への愛の言葉で伝えたいことはありますか?(昔作った亞里亞50質で亞里亞の名前が並んでいたカオスな絵面をちょっと思い出しながら)
「それが、亞里亞様も兄や様に会いに行ったはずなのですが」
「ああ……亞里亞がのんびりしていて、じいやさんが追い抜いてしまった的な」
 そういうSSもたくさんあった気がする……じゃあ今回は待ってみようか。
「せっかくだから家の中へどうぞ。こういう時に白雪か春歌がいるとおいしいお茶でも出してくれそうだなあ」
「お呼びですか、兄君さま!」
 タイミングいいな。
「鬼が暴れていると聞きまして、兄君さまをお守りしようとお供を集めていたら遅れてしまいました」
 やっぱりどこかズレていた。しかもお供の定番である犬、猿、雉はいいとして、外国出身らしく勘違いをしたのかあまり関係ないカウボーイまで連れてきてしまっている。敵かな? 味方かな? とか言っている。知らないよ。
「じゃあカウボーイさんには帰ってもらうとして……ツッコミが遅れたけど犬と猿と雉もどこから連れてきたの」
鈴凛ちゃんに作ってもらったメカお供です。雉はドローンに毛皮をかぶせて飛ばしているようですね」
「最新式だね。鈴凛VTuberになったらそういう最新メカの話題も出そうだね。それにしても、期待してしまうけど全員がVTuber化は難しいだろうけど、ボイスドラマとかでみんなの復活とかあるといいよね」
「不思議なお兄ちゃん、いつでも可憐たちはお兄ちゃんと一緒なのに復活だなんて」
 そうだね、まさかの復活もそれが楽しいのも本当にうれしいよね。
「ところで、雛子や鞠絵まで今日のギャグで扱えるとは思えないけど、どうなるんだろう」
「おにいたまー! ヒナね、千影ちゃんについていったところで鬼さんとお友達になったの!」
「よかったね! クマさんと仲良くするのも得意な雛子だから、お友達が増えたね。でも帰ってもらってね」
 ファンタジー風味の方向でやってきた。千影ももうちょっと見ていてよと思ったけど、まあ余計なことをしなかっただけでほめてあげたいのがシスプリのギャグSSなのであきらめよう。
「フフ……雛子ちゃんと仲良くしたい子は……たくさんついてきてしまったみたいだよ……」
「雛子が明るく元気に、すくすく育っているのはいいんだけど……」
「兄チャマがまた何かひとこと言おうとしているかもしれない、メモメモ」
 四葉、これは言葉に困っているんだよ。
「まあ雛子はせっかく来たんだから僕と一緒に遊ぼう」
「わーい、おにいたまと遊ぶ! 亞里亞ちゃんもいればいいのに」
 本当にそうだね。どこに行ってしまったんだろう。
 その後も病気でなかなか会えない鞠絵から、手編みで作ってくれた強く健康でいてほしい願いが込められていそうな鬼の腹巻が届いてべびプリネタなのか悩んだり、鬼みたいな姿になるFF12のラスボスっぽく機械と融合した鈴凛を千影に任せたり、鬼みたいな料理人と「クカカー! 料理は勝負だ!」「違いますの! 料理はきょうだいですの!」みたいな状況を千影に審査員してもらったりと懐かしい展開が続いたのは、久しぶりに懐かしいことを思い出す話だということなのだろう。長くシスプリ好きを続けていると、新しいことに出会う体験もたくさんあると実感する時期なのだろう。
 それにしても亞里亞はいったいどこにいるのだろう?
「……はっ……これはまさか……」
「また千影がややこしいことを言いだそうとしている」
「兄チャマがひどい、メモメモ」
 僕が悪いのかなあ。
「いや、妹を信じてやれないでお兄ちゃんと言えるものか! 千影! 何でも言ってくれ!」
「うん……どうやら亞里亞ちゃんは……兄くんに会いたいあまり……」
「あっ、にいさま。コーヒーにお砂糖は入れますの?」
「うん」
「えへへ、にいさまの好みはなんでも知りたい姫ですの」
「お兄ちゃん、お菓子はどれがいいですか?」
「おにいたま、どんな遊びが好き?」
「セクシーなのとかわいいのとどちらが好みかしら?」
 な、なんだ。急に忙しくなってきたぞ。
「やはり……亞里亞ちゃんも兄くんのことが知りたくて……いつでも兄くんを見ることができて……現世の様子をすべて見渡す……鬼の代表といえる閻魔大王となったに違いない」
「ああ、さっきの巨大化はアカギネタもあったとかそういう。でも亞里亞にそんな力があるかなあ」
「うん……私の妹なのだから……その気になればきっと……」
「すごい説得力だなあ」
「千影ちゃんの言葉は兄チャマにも説得力を感じさせる。メモメモ」
「間違ってはいないけど」
 というか四葉はそれをメモしてどうするつもりだ。
「そうか! こういう繰り返し印象付けた話が、事件解決の手掛かりになるという王道の展開なんだな!」
「兄やー。やっぱり直接がいいから、会いに来たの。閻魔大王をやめてきました」
 特に理由もなく解決するというのもよくある展開だよね。
「じゃあ話も一区切りついたことだし、次はみんなに似合いそうなボーカロイド曲などもネタにしていこうか」
「やっぱり兄くんも……私の兄くんだ……自由だね……」
「白雪はスイートマジックでばっちりだし、春歌は千本桜もいいな。可憐は定番で安心感もあるHand in Handが似合いそうだね。千影はバケモノダンスフロアかマダラカルトかばけものぐるいかエイリアンエイリアンか、他にも脱法ロックか選べる候補が多いけどどれにしようか」
「兄くんが……ひどい……これもメモしておいて……」
四葉はそんな兄チャマも好きです、と。これからも一緒にいてね、と。メモメモ」
 それをメモしてどうするのだろう。
亞里亞も兄やが好きなの。会いに来たの!」
「もちろん可憐も!」
「みんなのお兄ちゃんは、これからも大変そうだね」
 できればずっとやめるつもりはないけどね。
「がんばれがんばれ、お兄ちゃま!」
 やっぱり花穂の応援は普通が一番いいかもしれないね。