氷柱

『ハッピーハロウィン』
ハロウィンとやら呼ばれる日だそうね。
やれトリックだとか
トリートだとか
かぼちゃおばけだとかが
街をうろつくらしい。
そうすると子供たちも喜んで──
家の中を飾りつけしたり
お菓子作りも手伝ったりするの。
こういうなんだか
騒がしい日は──
口うるさかったり細かかったり
文句が多い人は
端に引っ込んで、出てこないようにして
散らかった部屋をたまに片づけるくらいが
ちょうどいいと思う。
どうせ、言ったってきかない子ばっかりだし
暗いところが好きなおばけみたいな顔でいい──
だいいち、こんな大騒ぎをして
浮世の憂さを晴らすようなことをしたって
もうすぐ年末のあわただしい空気だし
待っていたかのようにクリスマスや年末年始のムードがはじまる。
毎年、みんな誰も彼も節操がないったら。
だから──今日くらいは
後ろのほうにいてにぎやかな場にも加わらず
これから先の大変な日々を迎える前に
英気を養っておくのが
仕事だと思って、
何も言わないでおくわ──
別にパーティーを楽しんでほしいとか
がんばって準備をしていたのを見ていたから
せっかくだし──とか
そんな理由じゃなくて
ああ、もうすぐ年末で大変だなってだけ。
もう最近はずいぶん寒くなってきたものね──
そういえば。
蛍ちゃんのかぼちゃスープは人気があるそうよ。
とってもあったまるって。
壁際の暗がりが好きなおばけも──取りに行ってしまうかもしれないわね。
春風姉様の作る飲み物も
なんだか研究を重ねてきたような完成された出来だとか──
小さい子たちが、がんばって作ったクッキーなんかも
どうやら──うまくできたそうで、よかったわね。
気合の入った飾りつけもそこそこ成功したみたい。
やっぱり私が余計な口出しをしなくても、ちゃんとしてていいんじゃない。
ああ、お菓子の味見では、ずいぶんいろいろ食べさせられた気がするな。
闇に潜むおばけががんばることといったら
それくらいでいいんだと思わない?