『何かがあった』
不思議なことだ──
みんなの分のおやつを買って帰ってみると
警戒するように遠巻きに観察され
いつの間にかおやつだけ取られて
誰もいなくなってしまった。
普段はまとわりついてきて離れないのに──
まるで膨張する宇宙のようだ。
宇宙とは──神秘的であっても、なかなか寂しいものだな。
しかも、なんだか聞いた話によると
先に帰ってきた私が
おやつを持っていったとか
あとから帰ってきた私がいたずらをはじめたとか
妙な事件が起こっているらしい。
そう──まるで素粒子の世界で
常識的でない出来事が発生するように、
あるいは光速に近づくとき、強い重力が発生するとき
ニュートン力学が正確さを失っていくように
現実にも謎は多いのだろう。
夕凪がまた探偵みたいな顔をして
ルーペで周辺の足跡を調べていたから
まあそのうち解決するだろう。
そう、夕凪に任せておいたら、らちがあかないと考えた
氷柱あたりの活躍によって
一応の決着がつくに違いない──
別に、おばけが入り込んで悪さをしているというわけでもなし。
おばけなんているはずがないものな。
私はたぶん──明日もおやつを買って帰るだろう。
誰かに言わせると
細かいことは気にしないようなところがあるらしいのだ。
今も──おやつを奪われる危険よりも
友達から聞いたおすすめのおいしいお店のことを考えている──
フフ──もしかしたら夕凪たちの活躍は
私の生活にはあまり影響を及ぼさないかもしれないな。
後で話くらいは聞いておきたいものだが──