『木枯らし』
冷たい風が吹いて
葉を落とした枝も、淡い緑の草も
心細く揺れているの。
そんな寒い日の夕方になって
どうして星花たちは
先を争ってお外へと走っていくのでしょう?
着込んでからゆっくり追いかけてきた氷柱お姉ちゃんが
不思議そうに尋ねるけど
言われてみれば
星花たちだって玄関を駆け出してすぐ
寒い寒いって首を縮めて小さくなる毎日なのに
なぜ……
なのでしょう?
それは帰ってきてすぐのおやつで
テンションが上がったからなのかもしれないし
きのうはお昼寝をしていた青空ちゃんが
先頭に立って走り出したからかもしれない。
とすると、やがておうちの誰もが風の寒さを知り
おやつもおもちをまったり食べるようになる頃──
水墨画みたいに色が消え、どこか近づきがたくなったお庭には
にぎやかな声も途絶えるのでしょうか──
うーん、想像できないです。
いつでも星花たちはこんなにうるさくして
怒られっぱなし。
毎年、冬が着たくらいでへこたれない風の子だったの。
寒さがひりひり肌を刺すというのに
いったい何が子供たちを外へ連れ出すのでしょう?
まるで吹き付ける風の音が魔物の笛のように子供をさらっていき──
ああでも、悪いおばけはハロウィンの頃に追い返したから
街を歩くとお店に立つクリスマスの仮装にさくらちゃんが泣き出しても
そうおそろしいばけものの誘いは今ごろはないのではないでしょうか?
おばけも暖かいおうちへ帰りたい頃だと思います。
あっ、そうだ!
外に駆け出していくときだけじゃなく
ごはんの支度が出来たからと声が届いて
今日こそお兄ちゃんのお隣に座るんだって戻っていくのも
みんな弾丸特急の猛スピードです。
ブレーキをかけることも最初から考えていない加速で
どこかにぶつかるか
勢いをつけてお兄ちゃんに抱きつくまで止まらない!
となると、いつも加減を知らない子供たちは
冬になりちょっと寒くて一瞬立ち止まるくらいが
ちょうどバランスが取れていると知っている、
そういう感じになるのかな?
いえ、自分のことなんですけども。
寒い日にも外で遊ぶのが好きだったり
頭から湯気が出てほかほかしている理由は
冬もいつでも風の子だから、そして
かなり寒いくらいでちょうどいいから!
なのかもしれないです。
やがて夜は更け、お風呂やベッドにも走っていく時間。
どんな季節だろうと止まらない子供たちも
お布団をはね退ける元気にはそろそろ注意で
星花は夕凪ちゃんをとりあえず見ていたいと思います。