吹雪

『変身』
もうすぐハロウィン。
良い霊や悪い霊が地上に戻ってくるため
悪い霊におどろかされないように
先におばけの仮装をしておどろかすようにするお祭りです。
霊というのは──
肉体としての生命が消滅した後
目に見えなくなって
天国や地獄へ行ったり
祖先を見守ったり
毎年、お盆やハロウィンに戻ってきたりする
わりと忙しい存在です。
どのような姿をしているのか
さまざまな説があるため
特に日本では
おばけを真似る仮装は
非常に自由なものとなる傾向にあるようです。
白いシーツをかぶっておばけのふりをするように歩いている子を見つけて
足がそのままはみ出していたから
ああ、この靴下は夕凪姉の持ち物だ──
と記憶を辿りながら観察していたところ
後ろから夕凪姉に呼ばれて
目を戻すとシーツをかぶった姿は消えている。
この現象が発生した原因は
夕凪姉と星花姉があらかじめ話し合って協力したためだと思います。
ただ、二人がそう教えてくれたわけではなく
事情が明かされないまま終わると
シーツの中身がまったく別の存在だった可能性も残ることになります。
もしも麗姉や小雨姉であれば
秘密をつくることを好まないので
立夏姉ならば……
少し大きいかもしれません。
ユキから下では小さすぎます。
家族に仕掛けるいたずらのために友達の協力を仰ぐことは考えにくいので
もしもキミが同じ現象に遭遇したとき
夕凪姉と星花姉が同時に顔を見せていたら
シーツをかぶっている者は
理論では説明できない存在である──
ということになります。
そして、ここにはひとつの仕掛けがあって、
シーツのおばけを目撃した話を
私の経験談として伝えておくことで
次にキミの目の前に
夕凪姉と星花姉の二人と同時に
シーツをかぶって歩いているものが現れたときに
その中に入っているのが私であるという事実に盲点を作っておくことができます。
おばけと類似の現象はこのように人工的な創造が可能で
この場合、私がキミの驚く顔を見ることができないという理由があって
もう少し手の込んだ仕掛けを考える必要が出てきます。
そして、これも先に話しておくことで
今後は説明のつかない事態が起こったときに
あっさり気付かれてたように見せかけて種明かしをして
もう私たちのすることが終わったと思わせてから
さりげなく本命の仕掛けを披露するなど、
シーツをかぶるだけではそんなに驚いてもらえる仮装にならないと思って
工夫をしています。
楽しんでもらいたいので……
私たちも楽しく過ごすにはと
現在の方針を模索しています。
驚いた顔を見せてもらえたら
おばけに仮装した実感があるのではないかと予想しているところです。