星花

『チャンス』
いつも見ているはずなのに
今までにないくらい透き通った青色のような気がする
どこまでも高い秋空に
白くまっすぐにためらいのない線を引く
きれいな飛行機雲。
気持ちよく晴れた
一年でいちばんさわやかな季節の空気を吸い込んで目が覚めるみたい。
そう思うことは一年に何回でもあるものだけど
いん、まあいいの。
今日もすっきりとよく晴れた一日だったね。
そんなさわやかな時に
子供たちはおばけの格好に夢中になって
大好きなお兄ちゃんをおどろかす計画ばかり熱心に話し合います!
それはたぶん
世界のどこのどんな人より楽しんでもらいたいからなんだけど
こういうのっていいのかなあ……?
ちょっといけないような気分もあるから
かえって面白いのかな?
そ、そんな!
星花はあんまり清廉でなく
目指している人になれる希望は遠かった!?
そんなわけで
仮装のコスチュームが充実しつつあり
だんだんみんなの部屋から布も小物もはみ出して
黒や紫や暖かなかぼちゃ色が勢力を増しつつある眺めを
あらまあかわいい!
などといった声がちらほら聞こえてくる十月の半ばを過ぎた頃。
星花もあたりを眺めては
あらあらまあ。
夕凪ちゃんもつられてまあまあ、
吹雪ちゃんは──
おとなしくなでているのが好きみたいで
後ろから星花たちが近づいても気がつかないことが多いという
お祭り前のそわそわする雰囲気に近いものが
かぼちゃやこうもりが居座り、目に見えないなんとなく甘いあめの香りがするあたりから
ゆったりと広がっていく。
そんな衣装製作中の風景です。
蛍お姉ちゃんが、こういうのもいいんじゃないかって
まだまだ若葉のような子供たちに
芽生えた緑の色や開きかけのつぼみや
率直に言うと着たときにたまねぎみたいになるかわいい仮装の作り方を教えてくれて
そういうのが似合ってしまう星花を
お部屋の鏡の中にこれは確かにって発見できたために複雑になるわけで──
だってだって
かわいいけど
似合うけど
これはこれでありだとよくわかってしまっても、でも
芽生えのころだから球根がぴったり、というのは
そのまんまじゃないでしょうか!?
せっかくハロウィンにかこつけて
好きなものに変わったりできそうなふくらむ予感が
しぼむ……というほどでもないとして
ちょっとびみょう……くらいの難しいお顔になります。
だいたい、似合うか似合わないかで言えば
すごい生きているんだからおばけのふりができない!
そんな理屈になるわけで
まあなれるかどうかはおいといて
なにか派手に
かっこよかったらいいかもしれないな、
みたいな計画を立てる
お祭り前の時期というか
お年頃なんです。
大人のお姉ちゃんたちほど背がないのはわかっているから
イデアが必要なんだけど
さっぱり思いつかないまん丸の若葉でも
まだ妥協するには早めで
あきらめてはいけない
往生際の悪さという感じでしょうか。
お兄ちゃんをびっくりさせてあげたくて
面白いことがしたいのだから
やるなら今しかない!
かもしれない?
考えるとうずうずしている
たぶん小さい子供の
できるかどうかはわからない
何をするにも気持ちのよい秋の日の過ごし方です。
お兄ちゃん!
もしもびみょうな顔をしたたまねぎが歩いて近づいてきたときは
ちょこっと驚くふりだけでも──
考えておいてください。