真璃

『マリーのねがい』
今日も暑かったわね。
とっても必要な用事があって
駆けまわっていたとなればなおさら──
あっ、言っちゃった!
もう少し秘密にしていたかったのに──
聞かなかったことにしてくれる?
いいの?
フェルゼン、やさしいのね!
そんなやさしいフェルゼンには
どうしても秘密を教えてあげたくなっちゃうわ!
まあ、そんなにたいしたことでもないんだけど。
最近は青空が
早くお月見がしたくて待っているでしょう?
すぐに月を丸くして
十五夜の輝きを見せてあげることくらい
女王としては簡単なことだわ!
と思って、夕凪ちゃんとおまじないの相談をしたり
観月にも話を聞いては見たんだけど。
昔の人が、自分にはできるって
えらくなったみんなが言って、
でも、なかなか
そうはうまくいかなかったそうなの。
観月は物知りね。
昔のことで知らないことはないのかもしれない──
でも、それだと困っちゃうわ。
だあれもできなかったからと言って
これから初めて不可能を可能にし、
小さな妹の笑顔を見るというだけの
夢をかなえるのは
マリーが最初だったとしたら──
昔のことに詳しい観月は聞いたことがないだろうし、
誰だって知らないかもしれない。
できないとは限らないのにね!
いやまあ、実現できそうな手がかりとかは全くないんだけど。
誰もできなかったことをこなした偉人は
だいたいそんなふうに
まずは手探りからだものね。
たぶんそこからはじまるものなのよ!
たぶん。
というわけで、フェルゼンも何かアイデアを思い付いたら教えてね。
うーん、うむむ──
暑くてなかなか考えがまとまらないわ!