真璃

『観月の様子』
どうもこのごろ
観月が新しい遊びを独り占めしているみたいなの!
おいしそうにおやつを食べたら
鉢巻を巻いて、たすきをかけ
木の枝を選んでどこかに消え、
いろいろながらくたをお土産に持ち帰って
お部屋の宝箱にしまうのよ。
しっかり鍵をかける几帳面な観月の宝箱。
しまう時にちらっと見えたのは
変わった形の石ころ、ぼろの布切れ、絵を描いた紙とか文字を描いた紙、
あとはおもちゃの指輪や王冠の壊れたのもあった感じ。
子供っぽいものを拾ってくるわりに
きちんとお片付けができるのはえらいわね。
いったいどこに行くのかわからないけど
それにしても、どうしてマリーを誘ってくれないんだろう?
いくら秘密の場所を見つけたからって
誰にも教えたくないものなのかしら?
マリーならお気に入りの隠れ家ができたら
招待したくなると思うな──
仲良しのお友達、
自然とついてくる小鳥にトカゲに小猫などの手下たち。
もちろんフェルゼンも呼ばないと
そこはマリーの立つ舞台とは呼べない気がするわ。
あ!
もしや!
ううん、フェルゼンがマリーに隠し事をするはずなんてない。
マリーより先に誰かに指輪をあげるのも考えられない。
ごめんねフェルゼン!
一瞬でも愛を疑ってしまって。
でもそうなると、観月だって甘えん坊だしいつも一人とは思えないわ。
おうちの子の誰かと一緒なのかしら。
あ──
ああっ!
ももも、もしや!
マリーがフェルゼンの心を自分ひとりのものにしすぎて
すねてしまった観月は
同じ悲しみを持った姉妹の一人と
道ならぬ恋に落ち──
手に手を取って山奥の深い森へ──
いけないわ、観月!
なんてことでしょ!
フェルゼン、やっぱりマリーたちは
二人だけの世界を作るだけじゃなくてみんなと遊んであげたいわ!
それも恋に生きるもののつとめ──
うれしいことも喜びも家族と分け合うものなのよ!
そこで提案なんだけど
今度、観月の後をこっそりついていってみない?
覗き見とかそんなつもりじゃあないんだけど
どうなっているのか詳しく知ったほうがいいと思うし
探偵ごっこも楽しそうだし!
うーん、ただ、気付かれないように地味な格好をするのはあんまり得意じゃないわ。
観月の逃げる先がエメラルドの都みたいなところだったら
マリーも周りに馴染んでいいのにね。
ええっ? マリーはそんなのとは比べ物にならないほど輝いているって
フェルゼン、今そう思ったでしょう?
ともかく、知られてはいけない計画を練るために
しばらくマリーたちは二人きりで会う機会を作るべきね。
えへへ、よかった。
おっと! 気を引き締めなくちゃ。
たぶん大変なのはこれからなのよ!