真璃

『ねがいごと』
マリーはもうお姉さん。
小さい子とは違うの。
多少は一緒になってはしゃいだりするけど
おもちゃが欲しくて泣いたり
あんまりしない。
危ない遊びをしてしまって
みんながあんまり行き過ぎたりしたらたしなめるほう。
だってマリーがしっかりしていないと
観月もさくらもまだまだ子供っぽいでしょ?
だからお手伝いでみんなと買い物に行くとき
いとしのフェルゼンと手をつないで歩くのは
小さい子たちに譲ります。
しかたないわ。
マリーなら秘密の約束をして
フェルゼンとふたりでデートに行くこともできるのに
甘えん坊の小さい子たちはそういうわけにいかないでしょう。
こっそり話し合うため
人に見つからない物陰を探すこともできないし
恋人と結ばれたときに
どこにも行かないでずっといて欲しい願いをこらえるのだって苦しいに違いない。
だから、機転がきいて難しいことも解決できるマリーが
フェルゼンを好きでよかったでしょ。
あなたのことだけを一番に考えている子は
かわいい妹が寂しがったり不安になったりしていたって
ぜったいに放っておかないのよ。
いい子にしておつかいのお手伝いができたから
帰ってきた後で手作りのアイスも作ってもらえたんだし
さくらは笑顔で
おいしいおいしい
あーしあわせって。
ついさっきまできょろきょろしすぎて迷子になりかけたなんてすっかり忘れているわ!
よかった。
今日はマリーががまんしてあげられて。
最初はね、時間で交替にしようとも考えていたんだけど。
フェルゼンの所有権を。
ずっと譲ってあげたくて理由をいくつも思い浮かべたのと
自分がいちゃいちゃしたいのとは気持ちの中で別だから
両方が同時に膨らんでいっても仕方ないのよね。
だから今度は自分の幸せを願ってもいい番になりそうなの。
あ──でも
しっかりしているマリーが甘えていたら
フェルゼンはおどろいてしまうかもしれないわね。
まあいいか、サプライズをプレゼントということで。
それじゃあ人気のない物影に行って話し合いましょうか。
明日のことも未来のことも。
大丈夫、どこに行っても暗くても怖くない。
知恵の回るマリーはどんなおそれも振り切って
手をつないだだけで伝わる幸せを乗せて
手の中の暖かさと鼓動が聞こえるくらいの胸のときめきと
あとそればっかり言うから
これは全部、誰にも覗かれない物陰のおかげと思えばいい。
え? たとえ覗かれていても全部するのよ。
当たり前でしょ!