真璃

『フロンティアを求めて』
お空が灰色にくもりはじめ
朝からガラス窓を雨が叩く音。
すぐやんだ──
まだ、くもってる──
ぽつぽつはじまったら
またやんだ──
集まったり散らばったりの、きまぐれな雲を眺めて
指差しているお姉ちゃんたちをおいといて
マリーは雨の日だからって、のんびりしている余裕はないの。
いつも何かと忙しいことばかりで
わくわく胸を弾ませる乙女。
今日のお仕事は、風が通る日陰探し。
あつーい日って家中むしむしして
歩き回るだけで汗びっしょり。
そういうの、マリーには似合わないと思うの。
だから涼しい雨の日に探索。
合理的でしょう?
もう年長さんなんだから、知恵を使わないと!
とは、前々からいつも思っていたのよね。
だいたい、ふだんの暑い真夏の日は、風もぴったりやんでしまって
日陰を見つけたところで
ここが涼しい場所なのかそうでもないのか
しばらくいてみないと、すぐにはわかりにくいけど
今日はちょうどいい具合に、そよそよ風が吹き続け。
暑い日にいたら快適な場所なのかも
ぴーんとくるもの。
すぐにわかるというものよ!
おそらく、この夏一番のチャンス。
今を逃してはならない。
ゆっくり流れる雲を眺めて
おもしろい形で盛り上がっているお姉ちゃんたちは
後でびっくりすることになるのよ!
マリーの知恵の鋭敏な働きと行動力。
あとになって
ついていきたかったなー、なんて思っても遅いんだから。
フェルゼンも、かわいいマリーから目を離したらダメだったのよ。
一応、ひとこと誘ってはあげたのにな。
そんなわけで、本日結成された頼れるマリー探検隊のメンバーは
観月とにじちゃん、
それから、マリーがリーダーよってちゃんと言い聞かせておいたので
勝手な行動はしないはずの夕凪ちゃん。
さくらちゃんと青空ちゃんは
ホタお姉ちゃまが呼んだら帰って行っちゃった。
おやつ作りのお手伝い、本当にできるのかしら?
がんばってね!
マリーたちも、キッチンのあたりは歩いてみたけど
人の通りが多くて落ち着けないし
探している場所はここじゃない!
もっともっと、どこかにあるはずよ。
夏場を快適に過ごす
夢のような、それは楽園。
ありそうなものだけどなー。
おうちのどこかに。
直接日が当たらないところを回って
すずしそう? むしむししそう?
ねっころがって風を探して
ほこりだらけ。
ああー……
まあ、暑い日よりは汗で体に張り付いたりしなかっただけ……
走り回って汗かいたからあんまり意味がないけど。
そういうわけで見つけ出したがらくたの山。
お姉ちゃまたちに知られたらお目玉だから
秘密の部屋にまとめておいたわ。
夕凪ちゃんが勝手にその辺のダンボールをあけて回って
これはどかしても大丈夫かなあ?
っていうつもりだったそうだけど。
あれは面白いものを探していただけなんだと思うな!
あれこれ引っ張り出してきたし。
一緒に箱をのぞいたマリーたちと
大声ではしゃぎまわっていたんだし。
結局、見つけたのはお宝だったのかそうでもないのか
明日になって夕凪ちゃんたちと一緒にまた検討するまでは何とも言えないけど
でもまあ、家の中に妖怪が出なくて良かったわね。
観月がきょろきょろ、あれはもしやって言ってた。
そうそう妖怪なんて出るものじゃないのにね。
観月もおもしろいのね。
フェルゼンは、妖怪の一体くらい見つかったらよかったと思う?
今日見つけた古いお人形さんたちも、観月が気になっているみたいだから
何かあるかも?
別にない?
古いおもちゃを運んだ部屋は、まあ日が当たらないから涼しいほうかな?
風通しがよくないから、うちわ持参でね。
明日は探検隊みんなで、集めた財宝の品評会よ!
フェルゼンも参加したいなら、今度は一緒に宝探しのお手伝いしなきゃ。
忘れないでね。