綿雪

『今日も暑かった!』
ふうふう
たいへんたいへん──
ユキが、おうちに帰って
みんなを待っていると
駆けこんでくる足音、
にぎやかな声──
みんながみんな
涼しい日影と
冷たい飲み物を求めて
大騒ぎなの。
ユキは、くたびれる前に
無理をしないように帰って来るけれど
みんなはお外で遊んで汗をかくんだもの。
大きな声で、はしたなくても
しかたがない。
もしも──
お医者さんや、家族のみんなが
いっしょうけんめいにユキの体をよくしてくれて、
ある日ついに
ユキがふつうの子になった!
元気になった!
としたら、
お兄ちゃん、その時にはユキは
やっぱり大騒ぎで帰って来て、
汗だくで、とっても大変な顔をしていて
おうちで待っていたみんなをびっくりさせたり
くすくす微笑んでもらったりなんて
するのでしょうか──
次に帰ってくるのは、と
耳をすませるその時、
涼しい風が吹いて
秋の気配を感じると、
もしかしたらこの次は
そんなに騒がしくもなく
汗だくでもなく
ユキがびっくりするほどでもなく──
おしとやかで、穏やかな秋の日を過ごす女の子が
扉を開けるのでしょうか?
少しだけ──ほんの少し
過ごしやすい時間は増えていきます。
まだ無理をすることはできないけれど、
今日いきなりユキがよくなったからって
今年の夏は──残りあとどれくらいかわからない
みんなをわいわい言わせる夏の間は
そんなにうるさくならないかもしれません。
残念──
ユキだって、ときどきは
お兄ちゃんを驚かせたりしたいのにな!