『今日から』
ぎらぎら暑い昼間の一日が
もうそんなに長くなく──
日陰に逃げ込むようにして
夕暮れを待てばもう
日が落ちる山の向こうから──
虫の声がする草むらから──
夕立の後の薄くちぎれた雲のほうからだって
秋の気配はさりげなく
ついに私たちのもとに届く──
夏休みが終わって、もうずいぶん経ちました。
あの騒がしかった毎日は
今はどこかへ行ってしまって届かない
ひとときの幻だったのだろうか?
いろいろとにぎやかなのは
今でもそうだけど。
ときどき、涼しい風が吹くように
騒動の中に静けさが混じり
眺める景色はたぶん、もう
夏休みの物とは違う
秋が来た気がするのです!
具体的にうまくは言えないけど、
夕凪ちゃんがおいしそうなにおいに敏感で
おなかをすかせているようだ。
吹雪ちゃんが家の奥から少し日なたに出てきて
好きな本を広げたようだ。
そして星花は
特にこれといった変化もなく
みんなが少し
ざわざわしているのを見て
ただ、きょろきょろしている──
だから、特別なことは言えない。
ただ、そろそろ
秋を過ごしているんじゃないかと
お兄ちゃんに言ってみたいだけ。
もしかしたらそうかもしれないと言ってほしいだけ。
あ!
そんなふうに、きょろきょろしていたら
あっちのほうでも
不安そうに回りの様子を確かめて
これはもしや──という顔をしている
あの人は──
小雨お姉ちゃんですね。
今日も、遊んでほしい子たちに囲まれて忙しそう。
小雨お姉ちゃんも、何か変化を見つけたのかもしれないですね。
星花はこっそり近づいて様子を見て
具体的には何にも言えない
心細さをなんとなく抱えつつ──
小雨お姉ちゃんともお話をしてみたいな。
季節は移り、やがて変わっていく先は──
家族で迎える新しい季節だといいと思っています。