観月

『工作の時間』
小学校にあがり
お姉さんになると
みなが夏休みに好きなことをする
宿題があるという──
これを自由研究と呼ぶそうな。
都市の違う子供の好みを参考に献立を考えたり
むかしの時刻表と今をくらべたりする。
それはとても大変で時間と根気を要するのだが
苦労を経て研究を成し遂げた時の達成感は
夏休みでなくては体験できないとても素晴らしいものだという。
ただ大変なだけだという声もあって
未体験の子には何が正しいのか知らないが
マリー姉じゃやさくらと話をすると──
ためしに一度
やってみたい!
という意見は変わらない。
さくらは、夕凪姉が作っているような牛乳パックのお人形が
完成したときに怖い顔をしていたら
どうしよう──
という不安があるようだが
それは夕凪姉もがんばってかわいくなるように苦労しているし
なにしろ、見た目が怖くても
今のところはそんなに悪いやつには
あまりならなそうではある。
作った人の性格に似て
明るくてのんきで
人と遊ぶのが大好きで
未来への希望に満ち溢れているような──
作りかけの体中から早く完成させてほしい願いが
こちらにも伝わってくるようで
まわりのみんなもせかしているところなのじゃ。
ああ、まわりのみんなというのは
マリー姉じゃたちという意味と──それから──
まあ、いいか。
人形の形をしていて、作る人の思いもこもっているとなれば
どんなものができあがったって
なにも不思議ではないからな!
生まれてこい、早く生まれてこい──
面白いことがいくらでもあるぞ。
おまえとは、遊びたいことがたくさんあるのだ──
と、まわりのみんなも言っていた気がする。
わらわもそう思うぞ。
夏を過ごすのは、この世にあるすべてのものの特権じゃ。
いろいろなものが生まれ出でるのが、暑くぎらぎらした夏を知る
すべてのものの喜びじゃ。
兄じゃも、夏を楽しんでいるかの?