『エイプリルフール』
嘘をついてもいい日だそうだ。
といっても、嘘をつくのも
見破るのも、そんなに簡単ではない。
日頃からの訓練がものを言うはずだが──
でも、嘘をついていい日は今日だけだろう?
いつ訓練をするんだ?
というわけで、何かと大変な日だ。
今日ばかりは苦手なピーマンも
食べられそうだと見栄を張った夕凪のために──
春風はすっかりうれしくなって
ピーマンだらけのスパゲティを作ってあげたという。
今日のお昼ご飯は
ピーマンたっぷりのメニューだけ。
それでもせっかく
作ってくれたものなんだから
がんばって──
夕凪が食べてみようとしたところで
種明かし。
本当は、ちゃんと他の料理も作ってあったのだ。
こんなふうに嘘をつくのは難しい。
他にもたとえば。
季節外れのサンタさんがやってきて、
日頃がんばっている海晴姉やヒカル姉や
マリーや観月たちが
喜ぶような──
これはどうも似顔絵らしいものを
持ってきてくれたという。
サンタさんがくれたものだから
とってもうれしい──
よく似ていると言えないこともない
かわいい絵だ。
誰が描いたものか知らないが、
いつも小さい子のお世話で
大変な人たちへ──
お姉ちゃん、いつもありがとうと一言添えられていたそうだ。
取っても上手な絵だから
誰が描いたかわかるといいのに──
さくらや虹子は
恥ずかしいから秘密だと言う。
いったい誰の手になる絵なのだろう──
このように、嘘をつくのは難しくて
一日でなんとかなるものではない。
あまり無理をするものでもないだろう。
私か?
私は──ふつうだ。
嘘をつくのも得意じゃないぞ。
本当だ。