ヒカル

『手ごわい相手』
あいつは強い!
風は強かったけど、
外で遊びたい子がいっぱいいて
みんなでボールの取り合いだ。
すばしっこさでは
体が小さいほうが有利かもしれないけど──
サッカーなら
子供のころから──
上の姉に揉まれ、
だんだん大きくなる妹にも
負けられないって思ってやってきたんだ。
こっちも意地がある!
と。
そのつもりで相手をしてあげたんだけど、
結局一度も
かなわなかったのに──
明日も遊んでって
妹たちからまとわりつかれている。
これは大変だぞ。
どんなスポーツ選手だって、
始めたばかりの頃はかなわない相手ばかり。
それでも続けて
あきらめないなら──
強くなる人たちと
同じ道のりを歩き始めたことになる。
打ちひしがれて
実力を思い知らされて──
それでも、どうして
一番楽しい遊びを見つけたみたいに
あんなにうれしそうに、
次こそは絶対負けないって
根拠もなく言い切れるのだろう?
あんな顔を
いくつかの場面で見てきたけど──
負けて負け続けて、悔しかった時こそ
学ぶことがたくさんあって成長するチャンスなんだって
体だけじゃなく大きく成長した大人はみんな──知っている通りだ。
まだまだ
あの技量では負ける気がしないなんて
あぐらをかいていたら
たちまち──
そう。
泣きべそをかくのは、今度はこっちのほうなんだから!
年上の威厳を見せられるのも
いつまでだろうか?
せめて、みんなが楽しそうなこの春の間くらいは誰よりも強くなきゃ。
ぜったい追いつかれるわけにはいかないと思うんだ。
そんな大それた野心が果たして本当に、かなうのかな──?