星花

『私たちの窓辺』
ほんの少し前まで──
まるで氷の色と
日の当たらない暗い影だけの
モノクロのようだった
窓の外の景色。
凍えて身を寄せ合いながら
それでも何かを探すように
待っているかのように──
みんなで頬を寄せ合って見ていた景色は
ついに今
まるでそれしか見えないまま
夢中になったつぼみの
花を咲かせる喜びでいっぱい。
見上げると
青空の彼方まで季節の訪れを知っているみたいに
世界はすっかり
春の色で埋め尽くされたよう。
そう思っていたら──
家族でお庭に並んで眺める
裏山の方からは早くも
生い茂る緑の色──
暖かい日々の到来を喜ぶ
短い花の季節は移り
たちまちのうちに新緑が勢いを増している様子です!
にぎやかな声が届ける春の報告も
土の中から背を伸ばす虫たちの大きさ、
久しぶりに見かけるおなじみの柄の猫、
さらには怖がりの見せた幻かはたまた驚異の知らせか
裏山の木々の陰に潜む小熊の気配や
狐の耳としっぽを付けた人型の影、
それとピンク色でさまようUMAのうわさまで
これはもはや霙お姉ちゃんが迷子になることがあっても
風邪をひく心配もなさそうだという話──
おうちの中では
夕凪ちゃんがお風呂上りも服を着ないで走り回って
ぜんぜん平気になった!
という春の変化を伝え──
あの──
楽しい春休みも長く続くと
やっぱり学校もなく
元気のありあまる力を発散する場所もなく
夕凪ちゃんを止めるものは
何もなくなってくるんです。
遊び盛りの子供にやや小さいおうちは夕凪ちゃんのいちばんの遊び場となって
巻きあがるほこり、
とどろく大音響、
あらしの到来──
でも、星花たちには
もうお兄ちゃんがいるんですもの。
星花では止められない
元気な夕凪ちゃん相手でも
お兄ちゃんなら男の子だからきっと負けない──
大さわぎの春がやってきて
これからも大変なことがいっぱいだと思いますが
お兄ちゃんを支えるのは
星花のお役目です!
どうか──星花にお手伝いできることがあったら
なんでも言ってくださいね。
星花が頼れるのはお兄ちゃんだけ。
冷たい冬も楽しみがいっぱいの春も
それは何も変わらないままです──