観月

『ミッション』
春になっても
子供はすることがいっぱい。
庭を端から端までかけてみたり
とびはねて高い木の枝に触ったりするのじゃ。
それに吹雪姉じゃと戦って
トランプ遊びにも勝てるようになる。
一年使った教科書を結んで
机の置き場所を用意して迎えようとしている進級のときまでに
わらわが追いつかなければ──
どんどん引き離されてしまうぞ。
小学校の勉強は
毎日新しい発見が会って面白いと
吹雪姉じゃが言うから
その勤勉さに
走ったり跳ねたりしているだけでは
頭の中身が追いつけないような気も
ちょっとしてくる。
なんということであろうか
信じたくはないが──
思い切って力いっぱい
手に持った札を置いて
もうすぐあがりを
毎日育んだ元気でついにつかみ取るのじゃと思ったら
この展開を予想していた吹雪姉じゃが
同じ数字の札を四枚持って待ち構えていたという
すっかり手のひらの上で翻弄される瞬間。
どうも戦略と言うものを
たくさん知っておるようなのじゃ……
だが、だからといって
すぐ負けを認めるのは
兄じゃの妹にはひとりもおらぬ!
それに横で見ていて負けるなと口出しをしてくる氷柱姉じゃもいるので
その妹でもあればなおのこと負けず嫌いに違いない。
小さい子のとりえといえば
一緒に遊んであげる青空や虹子を膝に乗せ
足し算や引き算を
協力しながらできるということ。
まあ計算を教えてやる時間のほうが長いが──
それでもいいところのほうが多いと思う。
何度負けてもへこたれない元気が出るし
泣きそうになったら歌も歌えるし
何より膝の上の小さい妹にかっこいいところを見せたくなる。
誰でもそうなると決まっているようなので
味方につけた人数が多いほうが有利という話になるのだ。
あさひにのぼられ、青空に転がされながら
札を折り曲げて怒られつつも
ちびっこたちの挑戦は続く。
青く晴れた景色が透き通って窓に映る
うれしくてさわやかな日に
みんなと楽しくできて
しかも、あきらめないで勝利をつかむことができたなら
世界の誰もかなわないほど喜んでしまうはずだと
経験しなくても教えてもらわなくても──
一日中力いっぱいで過ごしたことで
子供は、もうわかっている。
その気分をわらわは知りたいのじゃ。