小雨

『おもしろいものは』
ぽかぽか陽気の
穏やかな秋の日。
おうちの中も
家族みんなの声でにぎやかで──
こんなふうに毎日が続いていけば、
怖がりの小雨でも
なんとかやっていけるかもしれないけれど、
でも、もちろん知っています。
もうすぐ冬がやって来て、
そうすると
暑い時期も寒くても激しい季節が苦手な小雨は
あの、曇りがちの厳しい日々に
とうとう──
うつむきがちの生活に
戻ってしまうかもしれないということ。
そう考えると、みんなはすごい!
この毎日を
精一杯楽しんで
大事なものにしようとして──
星花ちゃんは張り切ってカンフー教室で運動しているし、
麗ちゃんもお目当てのドクターイエローを求めて
調べ物をして──出かけていきます。
ヒカルお姉ちゃんも、何かの大会で
優勝したって聞いたし、
いろんなところで活躍する人が
いっぱいいます──
はたして──
小雨には、何ができるんだろうか。
これからの季節は
繕い物で、暖かくして
誰かの役に立つこともあるかもしれないけど──
たぶん人より、座っているのが苦にならないのがよくて
そこまで器用だとか──
手が早いとか──
創造力があって
挑戦していけるということもない。
今──
いちばん、自信をもってできることといったら
こんな小雨でも
暖かいみんなに囲まれてどうにかやっていけているのだから、
もし──落ち込むことがあったって、
むずかしいことがあったって──
小雨もそうだから──大丈夫だと
声をかけてあげられるくらい。
そんなにたいしたことでは──ないですね。
でも──こんな小雨の小さなお仕事が
誰かの役に立つのだとしたら
小雨に、そんないいことがあるのでしょうか。
いつか小雨も
大きなお姉さんになって──
そのときには──
さて、このあと、お裁縫がきりのいいところまで進んだら
怖いお化けに近づいてほしくなくて泣いてしまった
さくらちゃんの様子を見てこようと思います。
小雨も──もちろん泣いていたって教えてあげなくちゃ。
どうやって、怖いのを乗り越えたのかと
聞かれるかもしれないから──
小雨がそうしてもらったみたいに
そばにいて
怖さも悲しさも忘れるくらいに
夢中になる
面白いお話をたくさんしてあげられたら──と、思います。