小雨

『始業式』
うれしい、はじまりの日。
何か新しいことが起こるのは
そわそわするの。
怖がりで泣き虫な小雨でも
不安で心もとない感じと
弾むような足の軽さ。
どこか少しだけ
体が軽いような
次の学年に進んで最初の一歩。
春風お姉ちゃんは、お天気が悪そうで気にしていたの。
みんなのはじまりの日が、どんより雨模様だったら
春風お姉ちゃんは悲しくて
小雨たちのために泣いてしまう……
そんなことっていけないの!
小さくて弱くて
お兄ちゃんやお姉ちゃんに守ってばっかりの小雨だけど
晴れの日だったらうれしいのはもちろんだけど
春風お姉ちゃん、
小雨は強くなんて全然なくて
いつも心配をかけてばっかり。
それでも、家族が泣いていたら悲しいのは
強くてあこがれのお兄ちゃんが言うのと
何も変わらない。
やさしく根気強く慰めてくれるお兄ちゃんと違って
小雨は一緒になって泣いてしまうのが違うところ。
どうかお願い──
いつも笑って過ごしていてください。
そうしたら小雨も
いつも心配事ばっかりで困っている
不器用な女の子でも
お姉ちゃんがうれしそうだったら幸せなの。
小雨のすることがちっとも上手じゃなくて
失敗だらけでも
それでもいいんです。
お姉ちゃんには
落ち込みがちな小雨より
いつもうれしい気持ちでいてほしい。
そうしたら、お兄ちゃんだってたぶん喜ぶはずだし
小雨も家族のとなりにいるだけで分けてもらえるみたいに
きっとうれしそうにしている。
小雨のためなのか
お兄ちゃんのためなのか、だんだんよくわからなくなってきたけど
でも願っているの。
小雨のおうちのいつも優しい家族のみんなは
いつだって幸せで
にこにこ笑っていていいと思うから。
そうであってほしいから。
小雨は、晴れやかな始まりの日が
日の差さない雨の日でも
涙をこらえて
怖がる気持ちをぐっとこらえて
お兄ちゃんとお姉ちゃんに
笑顔でいてもらうためだもの、
必ず勇気を出して進んでいける。
登校するのに震えたりしません。
雨だって
寒くたって
風が強くたって
厚着をしていくから大丈夫。
立夏ちゃんと麗ちゃんにも声をかけて
前の日の夜にそれぞれの着替えを出しておいてもらいました!
輝くまぶしい真っ白の制服と、青い夜空の色の制服に
春色と白、二人のお気に入りのカーディガンが重なります。
小雨は茶色。
あたたかいです。
ちょっと……
きれいにおしゃれに飾るのは、上手な人じゃないと難しい色合いかもしれないけれど。
小雨の落ち着く色。
お兄ちゃん、おしゃれじゃない妹は恥ずかしいですか?
小雨はすぐ恥ずかしがってしまうみたいで
なかなか前に進めない。
でも、とりあえずはこれで一安心と
昨日の夜はゆっくり早めに休むことができました。
朝から──
晴れましたね。
久しぶりにあったか!
春風お姉ちゃんがお願いしたから
お兄ちゃんが叶えてくれた!
と、聞きました。
でもお天気を思い通りに操作するなんて
小雨のかっこいいお兄ちゃんだって
いくらなんでも
それはさすがに……
お兄ちゃんの力なの?
不思議な感じがするお兄ちゃんなの。
小雨にとっては、知らない部分がいっぱいあって
人にできない特別なことが、当たり前にできるんだと言われたら
そうなのかな──
というか
やっぱり、そうなんだな、
というのが正直な気持ちのような
そんなお兄ちゃん。
だから今日は
さすがお兄ちゃん!
帰ってきてから、踊る夕凪ちゃんと手をつないで
小雨も一緒になって
こんなにあったかくて幸せな日が
はじまりの日でよかった!
さすがさすが──
私たちの自慢のお兄ちゃんです!
って、なれない踊りをして
足をくじいてしまいました……
ごめんなさい、せっかくの日にけつまづくような
みっともないことになってしまって。
でも小雨は泣いたりしません。
今日はうれしい日。
明日からみんなで学校生活。
目指すは、下級生の憧れを集める先輩。
というのが立夏ちゃんの目標。
小雨もちゃっかり便乗して
やさしくて強くて
いつも明るい先輩を目指す──
決意の日。
今日は晴れてよかった!
小雨はぴかぴかのお日様に
とてもたくさんのすてきなものをもらったような
そんな気がする日だから
痛くても、すぐには泣かない!
意外と頑丈なところもある小雨を見つけました。