海晴

『秘密あり』
すっかり夏本番。
小麦色に焼けた
おてんば娘たちは
思い思いのやりかたで
季節を楽しむの──
涼しい場所へ読みかけの本を抱えて、
飲み物も用意して──
そこは自分だけが知っている
誰にも邪魔されない場所。
夏にはどうしても、
体を預けて
休む場所が必要になるから──
家の中の特別な場所を確保しておかなければ
はじまらない!
夏休みの一番最初の
大事なこと──
私たちの時と
今もそんなに変わらないみたいね。
麗ちゃんの姿が消え、
声をかけると
どこからともなくあらわれるようになった。
広い家といっても
風通しのいい過ごしやすい場所は決まっている。
もう、夕凪ちゃんや吹雪ちゃんに
いい場所は取られているはずなのに
麗ちゃんだけじゃない、
少し年上の子たちは
横になって目を閉じたい時が来て
どこへ隠れ潜んだのだろう?
うーん──
絶対ここに違いないと目星をつけていた場所は
外れたわ。
あるいは、複数の隠れ家を持っているのかもしれないけれど。
だとすると私の時代よりも、
小学生が鋭く自分の場所を見つけ、
くつろぐ才能は
鍛え上げられているのかもしれない。
でも、ここだってそう悪くはないわ。
私が昔隠れていた場所は──
きっとすぐ、誰かが見つけると思っていたのにな。
まだもうしばらく
私の特別な場所でいいのかしら?
子供の頃、
夏に読みたい本と
なんだか弾む気持ちを抱え
隠れていたころより
すっかり背は大きくなり
隠れ家も狭くなったけど──
まだ、涼しい風は変わらないまま
私の好きな隠れ場所を吹き抜けていく。
あの頃と違う好きな本と、
もう少しおしゃれになった飲み物と
ほんのわずかだけ、子供の頃と変わらないときめきを抱えて──
私はまだ目をきらきらさせて隠れていてもいいのかしら?
誰かが探しに来てくれるのを待ちながら──
夏の一日は、やさしい隠れ家で過ぎていくの。