星花

『絵の宿題』
宿題の一つで
人によっては
とても大変で厄介なのが
図画工作の、
絵の宿題。
テーマは──
夏休みの思い出。
つまり──
ほとんど
自由!
と、言っているみたいなもの。
4切りサイズの
大きな画用紙を抱えて
モチーフを探し
小学生たちが駆ける。
水彩絵の具で
描き上げる決まりなので──
パレットに水の補給をできる場所や、
絵の具が固まりにくい日陰を探すなど
話し合ってはいたものの──
いい眺めに
ぱっとひらめき
腰を落ち着け
下書きを始めてしまえば、
細かい理屈は全部
頭から抜け落ちて
夏の光を照り返すような
真っ白の画用紙に
集中していく──
お兄ちゃんは夏休みの思い出って言われたら
何を描くの?
女の子たちの間では
すいかも
むしかごも
朝顔もひまわりも人気で
みんな、決まるまでは時間がかかったのだけど。
縁側から身を乗り出すようにして
外で遊ぶみんなを描いたり
ときには水撒きの手伝いをして
ビニールプールの子供を見つけたら手を振る
夕凪ちゃんの後姿を
構図に収めて、
星花は涼しい部屋の中の──
光と影のくっきり別れるあたりの
絵になる景色を見ています。
庭の花壇を遠くに眺め、
部屋の中には扇風機とすいか、
蚊取り線香の煙が揺れて──
汗をかいたときに投げ出していった上着やタオルも転がって
画用紙の隅から隅まで
色鮮やかな
夏休みの思い出。
たくさんの色を作って並べると
にぎやかで
ときどき涼しいそよ風が吹き抜けていくような
そんな絵が星花にも──
描けそうな気がする。
みんなの夏休みの宿題も
早い子はいよいよ、仕上げにかかる時期がやってきました。