海晴

『夏の終わりに』
楽しかった夏休みは
真夏の雨のように……
一瞬の稲光のように
終わってしまうの。
強くまぶしく照り付ける日差しも
静かな月の夜の涼しい風も
冷蔵庫で眠る宝物のアイスも何もかも
太陽が一休みの頃あいを見つけてゆっくり傾けば
もうどこにも取り戻せない
遠い過去の思い出。
まあ、南の島に飛んでいくなどすれば
話は別だとしても。
気持ちはそろそろ
運動会やお月見に向いているみたい。
さくらちゃんたちもダンスの練習を始めたようだし。
鈴虫のきれいな声も聞こえてきて
本当に終わってしまったのね!
長かった夏の日々。
ありがとう──
楽しい思い出の日々。
それにしても
夏の始まりに蛍ちゃんがあまりにも楽しみにしすぎて
極厚のを用意した今年の夏休み用のアルバムは
惜しいところでぎりぎり完走までには届かず
何ページかあまっているみたい。
日常の風景で最後を飾るのもいいけど
ここはせっかくだし
おしまいまで夏の写真できっちり埋めたいのも
人の気持ちと言うもの。
もしかしたらこんな機会もあるかもしれないと思って
この夏の水着はしまわずに取ってあるんだから
しょうしょう8月に間に合わなかったとしたって
別に何の不都合もないわよね!
少しくらい夏っぽい衣装に着替えるだけなら。
カメラの使い方だって、何回も麗ちゃんに聞いたことだし。
毎回同じ事を聞くってたまに怒られるけど
そこは、ほら。
なんだかんだで優しい麗ちゃんだし。
なぜか優しい吹雪ちゃんが代わりに先生となって
あらわれることもあるとしても。
写真は残せる!
うれしい!
ほら、何の問題もない。
えーと。
まず、カメラの使い方を確認してから水着になったらいいかしら?
それとも、そろそろ使いこなせそうな気がなんとなくしてきたし
時間ももったいないから先に水着になってもかまわないかな?
じゃあ、そうと決まったら
ためらう理由は何もないし!
まだ楽しかった記憶が体に残っているうちに
どんどんいっちゃおう。
少しまずいことになりそうな感覚は
知らないうちに吹き飛んでしまうわ。
この夏の日々はずっとそうだったんだから
あと少しくらい、許してもらえるよね。