観月

『闇の奥底』
まっくらにくらい
森の深み──
次第に明るい春が来て
夜に潜む者たちも
強い日差しの下に引きずり出されようとする
今日このごろ。
それでも──
少し前みたいに
薄曇りの空の下で
心地よく背を伸ばし
時には敵を気にせず丸まって
寒くても気ままに過ごしていたものたちは、
日が当たるようになると
うまく暗がりを探し
安全かどうか鼻を鳴らして
転がり込んでいくようになるのじゃ。
ずっとそうして
怖ろしい森のぬしから
逃げてきたので──
おひさまの強い光が照らすほどに
影の色も濃く
身を隠してくれることを
知っている──
兄じゃも時には
かくれんぼのときに
押し入れの戸を閉めて声をひそめたときの
もうこっちから出ていくまで
見つかることはない
してやったり感を
思い出すこともあるのではないか。
春の光が強くなり
影に沈む場所が季節で変わっていくたび
新しい隠れ家を見つけて
わくわくする──
子供たちはそういうものじゃ。
だいたい──
お山のけものとそんなに変わらぬな。
もしも兄じゃがある日
ひらめいて
よい隠れ場所を見つけ出したとしたら
音がなくとも
見えずとも。
わらわはきっと
すぐに見つけ出して
背中の方から
わあっ!

おどろかせたりもできるぞ。
春の明かりのもとでも
かくれんぼが得意な子供の
不思議な自信は
そういうものなのじゃ──