ヒカル

『おみとおし』
ほら──
みて!
一日ごとに早く、暗くなる
日暮れに追われるように
家に駆けこんでくる子供たちの足音。
精一杯遊んだはずでも、
表にぜんぶやりたいことを置いてすっきり帰ってきた子、
あるいは何かやり残したことのあるような顔──
小学校では放課後の野球が
最近の人気なんだって。
よく晴れた空に向かって
吸い込まれるように飛んでいく白球!
追いかける子供たちと
鳴りやまない声援。
そうしたらその次は
ホームランをかっとばした、
強打者をうまく打ち取った、
力を合わせて一点をもぎ取った──
ならいいけど、
試合に負けていたり
あと一打席で逆転の目があったのに
暗くなってひとりまたひとり
背中に勢いよくランドセルを乗せて
家路につくメンバーたち。
よくある、
そして意外と
大きくなっても忘れることのない
楽しかった日の出来事──
でも、あんなに
勝った負けたが大人からは
一目でわかるほどだったのかな。
私たちの頃も──
オマエだって──
持ち帰ったお話を
子供だったらちっとも隠せないもので
ママや海晴姉たちには丸見えだったのかもしれない。
うーん、私はどうも
ママや長女に生まれたことがないから
そんなものなのか
わからないな!
いっぱい打たれて帰ってきた日だって
たくさんあったのに──
あっ、年上から見たら
何もかもばれてしまうんじゃあ
もしかして、
今この年になっても私の持ち帰ったあれやこれは
筒抜けだったりするのかな?
うーん、でもまあ隠すような大変な秘密もそうないからいいか。
それにもう私だって
全部顔に出るほど子供じゃないと思う──
ま、細かいことはいいや。
ボールを投げる
相手になるなら──
多少の心得がある。
今すぐっていうわけにはいかない
また明日! っていうのが
もどかしくって
眠れなくなりそうだけどね!
ん?
こんなことじゃあ──やっぱりまだ
ヒカルもなんだか子供みたいじゃないか。
今日も全部
朝にオマエと顔を合わせてからの
あれもこれも
全部まるまるとばればれなのかな?
変なの!