ヒカル

『どこかへ』
白くて
ふわふわで
体重のない
あのおばけたちは、
この時期にやって来て
どこへともなく歩くという。
東へ向かうのか
西がいいのか
誰も知らないけど、
子供みたいに行ったり来たりするんだって。
誰の話だったかな?
それを聞いて──
ついこの間の海晴姉のことを思い出した。
海晴姉は大人で
いろんな知り合いがいるから、
話題も豊富で
話がどこへ行くのか──ときどきわからなくて
どきどきする。
スポーツジムに誘われて
行ってみたとか
占いの勉強だとか
大事なスキンケアとか
私のよく知らないことばかりを
教えてくれて、
毎日新しい出会いを見つけている。
同じ姉妹なのにずいぶん違う気がするな?
もう少ししたら海晴姉は
大人になるから、
難しい本にもやがて挑戦してみたいって。
知り合いの人たちが
面白そうに作っているお料理のレシピを
おだてて聞き出して舌で盗んで
持ち帰って来る──
けれど
まだ時間が経った先でないと果実酒を漬け込む趣味も
お酒に合わせる味付けも
できないから──
もうすぐだと待っているんだそうだ。
今の時期がそういう話題が多いから
あと少しして
またこの時期が来たら
ちゃんと、覚えていて教えてあげる約束をした──
その約束は必要なのかな?
楽しみで忘れそうにない顔に見えるけど。
おばけたちは長い時間をかけて歩き回って
どこかに落ち着く時が来ると
誰かに聞いた。
誰に?
誰だったかな。
海晴姉は面白そうに歩いて
新しい歌を子供たちに持ち帰ったりして
明日は何をして
どこに行くのか私も知らない。
知らないことばっかりの
いくつか年が上の姉のこと──
時間が来たら私も同じ年になって
その時には──
どうなっているんだろう。
今日も行く先に迷ってさまよう影を
みんなが遠くに眺めたそうだ。
知っている顔か──知らない顔か、
あるいは、きのうまでと違う顔をした私だったのか?
そうだったら面白い気もするんだけどな。