綿雪

『にこにこ』
シャンシャン
キラキラ──
どこかから聞こえる
この澄んだ音。
きれいで優しいのに
情熱的で
胸がどきどきするような──
これはお祭りの時の音?
太鼓が遠くまで鳴り響いて
笛は踊るように楽しく、
お祭りに使う道具の
鈴の音が
夏の夜に広がっていくと──
世界は清らかで
祝福に満ちていく。
この街にも、またお祭りが来ましたと
告げているよう──
はじまりと、
楽しいことと
怖いことも、
いろんな出来事があったけれど、
今日こうして
お祭りはやってきたと──
でも、今はもう
ときどき風が冷たい
季節は秋。
本当にお祭りの鈴なのでしょうか?
ユキのかんちがい?
まさか、もしかすると
聞こえてきたのは
まだ遠くにうっすらと見えているだけで
だんだん近づいてきたと
大人たちのお話にときどき聞こえる日、
いつかもしかすると訪れる
鈴の付いたそりに乗る
トナカイの気配では
ないでしょうか。
もう、お店のカタログで
クリスマスケーキの
予約も始まったっていうの!
ユキはとても驚いてしまう──
胸はまたドキドキするみたい。
寒くて雪の降る季節を
待ちきれないみたいに
顔をのぞかせた子がいるかもしれないだなんて──
でも、やっぱり早すぎるかな。
かといって鈴虫の面白くて生き生きしている泣き声と聞き間違えるには
だいぶ違う気がするし──
まだユキの知らない秘密が
世の中に隠れていることだってあるのかもしれないし。
耳を澄ませると
幻だったかのように
消えてしまったけれど
ユキは確かに聞いたの──
とってもきれいな音。
胸はどんどん高鳴っていく。
このままだと、何かいいことがあるかもしれないって
早くお兄ちゃんに
そんな気持ちを聞いてもらわなくては
いられなくなってしまいそう──
たいへん!
もうすぐ、そうなりそうな気持ちです。