綿雪

『わたしのお姉ちゃん』
ユキのお姉ちゃんは
氷柱お姉ちゃん。
本当はたくさんの
お姉ちゃんと妹、
それにたったひとりの素敵なお兄ちゃんが
いるけれど
やさしくて
頭が良くて──
ユキのことをいつも大事にしてくれる氷柱お姉ちゃんは
なんだかユキにとっても
とくべつに大好きなお姉ちゃん。
もしも、いつかユキが大きくなって
遠くへ旅に行くこともできるようになったとき、
どれだけがんばって
世界中を探したって
こんなに優しいお姉ちゃんはいない──
もちろん、ユキが大きくなったって
こんなに立派なお姉ちゃんになれるとは思えない──
だけどユキは知っている。
まだ小さな子供でも
とっくに知っている。
氷柱お姉ちゃんはやがて
誰か大切な人と出会い
結婚して
もしかすると家を出て行ってしまうということ。
もうユキのことが
氷柱お姉ちゃんの一番でなくなる日が
いつか来るのだということ──
今はたくさんの家族で
にぎやかなこの家も
だんだんと人が少なくなって
どこにも行けないユキが一人
取り残されてしまう日が
来るかもしれない。
それは──
みんなが大きくなったらやって来る
当たり前で平凡で
きっととても幸せな未来のうちの
一つなのだろうな──
と思う。
でも今のユキは小さくて
まだぜんぜん子供だから
わがままばかり言って遊んでもらいたいの。
氷柱お姉ちゃんに
いつもそばにいてほしいの。
ずっとずっと
これからも一緒だと思えるような
そんな気がしてくるといいなと
ユキのあまえんぼうは
きりなく──
今日も続く。
お兄ちゃんから見たら
だらしなくて
はずかしい
まだまだ成長が必要な仕方のない妹でしょうか。
ときどきは
そう思われてもしょうがないかな──と
考えるんです。