観月

『ジングルベル』
おたのしみ会の出し物に
こうして鐘を鳴らす練習をしていると
いよいよ今年も清らかなる日が間近に迫ってきたような
むしろこんなにもいい音を奏でる道具が
揃っているならば
もう一足早くその日は
我が家についうっかりやって来ているような気分もしてくる。
どうじゃ、子供の鳴らす鐘の音に混じって
遠くから鈴が歌い橇の滑る気配が
いつのまにかすぐそこまで近づいているのではないか?
ほうれ、少し手を止めたら
耳に届くのは──
サンタさんの魔法の橇がまっしぐらに
良い子の家へ向かっている音──
ではなくて、にぎやかにはしゃぐ声であった。
気が早かったかの?
こんなに楽しそうなものがたくさんある
クリスマスの祝祭の準備中では
例え通り魔に魅入られなくとも
あるいは黄昏時の夜の手につかまれずとも
気がおかしくなる瞬間はある。
このままずっと
鈴の音とみんなで作ったリースや
がんばって飾り付けを手伝ったツリーを囲む眺めの中で
いつまでも変わらず
兄じゃやみんなとともに
ずーっとクリスマスを待って
楽しい時間を過ごすのだと。
ふふふ、そんなことあるわけがないのにな。
時が行きすぎれば
お祭りの祝杯をかわしたあとに必ず
おかたづけの時間が待っているし
そのすぐあとは寒い中で大掃除。
身が引き締まるのはいいがな、
わいわいうるさくなるのはたいへんじゃ。
そもそもなにかのおかしな力で
わらわとみんながずーっと
このきれいな音が鳴る時間に閉じ込められたとしても
修行をしていたわらわがすぐに
これは!
と気付いて
助け出す役目があるから大丈夫なのじゃ。
おや、今度こそ
夜の星空を渡り近づく鈴の音が聞こえるな。
サンタさんも良い子の顔を見たくて待ちきれまい。
なんていうのは冗談で
わらわが思うに海晴姉じゃのおみやげじゃ。
うーんと喜んだ顔を見せないと
きっとへそを曲げてしまうから
にっこりを伝えられるよう
いちばんうれしいときの顔をいつも見せねばならぬ。
そう──毎日欠かさず繰り返す
たゆまぬ経験のみが助けとなろう。