ヒカル

『それは疑惑の値段』
聞いたよ。
そうらしい──
霙姉が大事なお宝を
子供たちの遊びのためにポンと
渡してくれたという
あのうわさは
どうも──
ウソとも言い切れないような
微妙な感じが
ざわざわと……
私の中でもありそうな話に
なってきているというか。
どうも前から、
他人にない才能を
持っているようなところはあるんだ。
古本屋でほこりをかぶっていた本を
見つけ出したら、
なんだか入手困難で
好事家は垂涎なんだという話を。
霙姉からではなくて
学校の先生から聞いた。
大学の図書館に渡るように
本人を説得するまで、
大変な苦労があったとかなんとか。
それにフリーマーケットで見つけた
変なアンティークの古びた人形が、
その後海晴姉の読んでいた雑誌で紹介されていたのに
ちょっと似ていたとか
そんなことも……
あれ、あの人形は
今はどうしているんだっけ。
まさかさくらが言うみたいに
百万円もするものではないとは思う──けど。
それとあんまり関係ない話かもしれないけど、
霙姉が商店街のお店の人と話して
聞いたことのない食べ物を買ってきては
真剣に料理を──
春風姉に作り方の説明をしていたと思ったら
しばらくして最近の流行りだとテレビで見たりもして
ええーっ!?
って。
ときどき、霙姉といるとならない?
そういう。
ええー!
なんて。
人にはいろんな才能があって
私ではとても真似できないことをしているのを見ると
感心するやら
人の能力の幅広さに驚かされるやらといった感じだ。
まあ霙姉もああ見えてちゃんとしたところもあるから
あまりにも特別で世の中にいくつもないようなものを
子供と遊ぶときに調子に乗って持ち出すなんてことは
きっと──たぶん──
さすがにないと信じたい。
オマエもそう思うよな!
今だけでもいい──
どうか、言ってほしいんだ。
そんな無茶苦茶は
ないに決まっているって!