『禍福』
人が言うには、
悪いことばかりは
続かないし、
運がいいと思う時も
いつまでも続くものではないと
そのような話があるそうだ。
でも、本当にそうだろうか?
宇宙の片隅の小さな星の
ほんのちっぽけな生き物にも
運命という理想は適用されるだろうか?
少なくとも
確率としては──
短い人間の一生に
充分な試行回数から導かれる
平均値が、
必ず与えられるとは
考えないほうがいいように思う。
だから私は、
私は──
これからどんなことがあったって、
世の中には一つも
悲しいことなんてなくて、
今まで経験した時間の
ひとつ残らずすべてが
幸運を体験する日々だった、
確率の偏りなんてあるわけがないと
言ってみたいんだ。
この先ずっと、
いいことしか続かない
うれしい毎日だと決まっているって、
心の底から本当に
言葉にすることができたなら──と思う。
この家で──
みんなと過ごすことができた
私なら──
予想のつかないことだらけの世の中で
いつ、何が起きても
転んでも──
きっと誰かのことを思いながら
そんな話を続けていると
信じたいな。
ああ、何の話かって?
うーん、つまりだな。
海晴姉はそれは単純に
数を重ねているだけだというけれど、
たまにみんなと
懸賞のハガキを書いて、
あんがい当選回数も多いのは
これから先肝心のほしいものが当たらなくなるフラグだとは
決して認めるつもりはない、
ということだ。
百万円のお宝も本当だぞ。
かつてそれだけの値段になる本を出した作者の
正真正銘のサイン本だというのは間違いない。
まあ、最近の懸賞は当選者の名前も入っているから
私の大事な宝物でも、
そんなに他人が欲しがったりしないだろうし、
そもそも確かめるつもりもないからわからないが。
そして、この私が認めるいいものだから、
ひっくりかえして見つかるような場所にはそもそも置かないと推理した
吹雪がやっぱり、
うまく見つけ出したようだ。
空のように偽装したきれいでしっかりした小物入れの二重底──
観察力と推理力と
それから幸運──日頃の行いがいいということにしておこう。
せっかく見つけたからと手に取ってくれたし、
気に入ってくれるといいけど
まあ、それはなるようにしかならない。
人の好みまでは私の手には余る話だ。
もしかしたら、春風がどこかに置き忘れて探しているという
お料理の本こそが、
妹たちの毎日に役立つ
本当のお宝になるかもしれないし──
春風が場所を思い出せないでいると、
今度は春風のために
みんなが力を合わせる、
捜索隊たち第二ラウンドのゴングが鳴らされるだろう。
もちろんその未来には、
面白半分でたきつけた
誰かがいるのだろう──
でも、自分で言ってみたけど、面白半分という言い方は私の名誉に関わるな?
愛する家族のみんなが明日も
心から笑顔でいられる時間を
少しでも多く作るために──
というのはどうだろう?
嘘やごまかしではないつもりだ。