『がっかり』
私だって
わかってる──
今は日本中が
大さわぎだってこと、
イベントが中止になるのも
仕方がないこと。
自分たちにできるのは
健康を大事にしながら、
身を守れるよう考えながら過ごすべきだということ。
誰が悪いのでもなく
今はただ──
それぞれができることをやるしかないのだと
わかってる。
でも、やっぱり
急に切り替えができる人なんて
なかなかいないと思うわ。
もちろん春休みの鉄道イベントが
予定通りに行われていたとしたって
小学生がなかなか参加できるとは限らない。
でも、特別な出来事ばかりじゃなくても
この日のために手入れをしておいた
ちょっといいカメラをカバンに入れて
少しだけ晴れやかな気分の服に着替えて
春らしい景色の中を──
いつもの好きな場所へ歩いていくのは
誰にでもできると思っていたのに。
もうすぐその時が来るような気が
していたのに──
気持ちの切り替えの達人である立夏ちゃんが
私の家族には存在していて、
おまけにルームメイトでもあるのだから
観察して学ぶ機会は多いの。
どんな相手からでも
こっちが学ぶつもりでいれば
教わることはとてもたくさんある──
誰でも一つくらいは取り柄があるものね。
見ていた感じだと
楽しみにしていた予定がなくなったら
悲しいのは当たり前なんだからと
思いっきり落ち込むのは
必要な過程らしい──
ただ見ていただけの推測だから確かなことは言えないけど。
でも、仮にそうであったとして
泣いてしまってもいいのだとしても──
別に私は泣かないけど。
その後ですっかりきっぱり
考えてもどうにもならないからと、
いつまでもこだわっていたってつまらないからと──
全部忘れる能力が
どうやったら身につくのか、
まだ答えが見つからないの。
あなたも立夏ちゃんを見ているなら
何かヒントくらいはつかめたりしていない?
誰であってもなかなかできないことを
実現する才能が
今はうらやましい。
立夏ちゃんも今年は一緒に行きたいって言ってくれたのに──
いったい忘れたい時に忘れる力が身についているって
どんな修行を積んだ女の子なのかしらね!