『風の通り道』
今日は暖かく
過ごしやすい日だったな。
いつの季節もさりげない調節で役に立つ
黒い肩掛けも──
そろそろ薄いものに変えたほうがいいのだろう。
冬に戻ったような日が続く
行ったり来たりのせわしない春のはじまりも
もうすぐ過去のものとなり
どこまでも限りない宇宙のどこかへ消え去ってゆく。
これからは汗ばむ初夏の気温が
私たち家族を包む日が
もうすぐそこに来ているのだな。
日なたで読書を楽しみ
わずかな休息を求めて目を閉じた闇に身をゆだねると──
なぜか退屈をもてあましているように見られ
タンスの入れ替えとほこりっぽい押入れへの旅を
求められる謎の現象も
きっと過去のゆかいな思い出となって
少しだけ穏やかになったこの風に塵と混ざり合って運ばれるのだ。
いつの世も、どんな時代も
うれしいものは
春の訪れ──
そして春が予感をくれる
まぶしい光の降り注ぐ
まるでひとときに情熱があふれ
燃え尽きてしまうかのような
ぎらぎらした輝きの季節に
きっとみんなが腰を落ち着ける場所を求めて
探し出す止まり木を
今から見つけ出しておこうと思うのは
自然な考え方といえるし
そのような先見の明を持つ者が
人より少しだけ早く
そよ風に包まれる静かな時間を楽しめるようになるのも
春らしさの贈り物といっていいだろう。
おろしたてのマントに身を包んでさすらい
今日見つけた小さな日陰は
近くの窓から揺れる木の枝が眠りを誘うような
美しい片隅で
そこにいて春を感じると私は──
まだ風が少し冷たいのを知り、
は、はーくしょん!
衣替えは少し早まったかな──
もう少し心地の良い場所を見つけに
影を渡る日々は続く。
ほんのわずかに疲れを感じて
目を閉じたときには
よく知っているみんなの声が聞こえてるのも
良いものではないかと思う──