観月

『押し寄せるもの』
やってくるぞ!
春も近づいて
すっかり暖かい陽気を
楽しんでいたこのごろに──
ふたたび戻ってきた
恐ろしい寒さが
お天気予報の日本地図を
雪だるまで埋めてゆく。
この街まではさすがに雪雲は届かぬようだが
ついにこれまでの冬の最後となる寒さに要注意!
みんなで丸くなってしのぐのじゃ。
なかなかのしぶとさで
わらわの家族を困らせていたが
寒さに耐えようと鬼ごっこをして駆け回ったり
大事なお風呂をいっしょうけんめいに磨き
ならんでシチューに入れるじゃがいもの皮むきをした
あのそうぞうしい冬も
これでついにおしまいとなると
首元を通り過ぎて悪さをする風が
懐かしいようじゃ。
おまけに改元も間近に迫って
気がつけば平成最後の冬となった。
みんなと過ごした平成の冬に
思い出をたくさん作って──
もうこれ以上ないというくらい遊びつくしたはずなのに
終わるとなればまだやり残したことがあるような気分になるのは
いつものことなのに──
とにかく、今は力をつけて戻ってきた冬の嵐に
負けずに立ち向かい
元気で過ごすことが冬の最後の目的。
せっかく花が開いた春を
兄じゃと過ごすためにも
負けられぬ!
冷たい風には
同じく太陽の射すことの少ない
異界のものたちがくっついて
やってくることが多いようじゃ。
とりつかれたらなんだかさみしくなったり
朝には布団が恋しくなったり
気がついたらこたつの上がみかんの皮でいっぱいになっていたり
それでいながらもうちょっとおなかに入れるものが欲しくなったりと
さまざまな出来事が起こり
世の中を乱すものじゃ。
せめてこれ以上みんなが
だらしないおばけにとりつかれることがないようにと
わらわの修行の成果を見せることができれば
おそらく冬の最後に思い残すことはないであろう。
帯をきちんと締めて
こたつから出たら
寒さに立ち向かい最後の仕上げにとりかかるときがやって来るのじゃ。