観月

『ときめきジャンケン』
お部屋でのんびりくつろいでいると
庭のほうからは
勝った、負けたの声が聞こえてくる。
おうちのみんなはとても元気だから
家の中に同じ年頃の遊び相手や、
力が拮抗する他威張るもいると
勝ち負けを競ったりするのが
同じ年頃の他の女の子よりも好きなのかもしれない。
そのおかげで誰よりも負けず嫌いに育ちつつあるような……
おままごとをみんなでしたい年頃には少しつらいであろうな。
いいお天気となったら
全員がもはや自分の体力の限界も知らず
姉じゃたちが声をかけて休むようにうながしても
答えるのはたった一言
あとでー!
それだけ。
付け加えることがあるとしたら
大丈夫、このくらい! とか
邪魔をしないで、それどころじゃないんだから! とかばっかりなのだから
まったく上の年頃になるほど困ってしまうことじゃな。
ふふふ。
もちろんわらわもまだぜんぜん小さいほうなので
お祭りみたいにそうぞうしい声が聞こえてうずきだしたら
大丈夫!
わかっておるのじゃ、と姉じゃの止める声に答えながら
駆け足をはじめてみんなの輪に
まーぜーて!
おねがいをして。
そしてそのまま夜が来たら
ぐったり休んで
まだごはんも食べていないのに
テーブルは右のはしから途中までおねむ。
その中に、やはり首をこっくり眠そうな観月がいる。
わかっている。
ただ、にぎやかさにと惹かれたあと
いい具合にあと少しで勝てそうな力比べが始まってしまったら
負けたくなくて
止められないだけなのじゃ。
今日の乙女たちの戦いはじゃんけん。
小さい子も混じって遊べるから自然にこうなったとはいえ
奥が深いぞ。
なにしろ、世の中の誰が考えたのか──それを誰が聞いてきたのか
足でするじゃんけん。
いっせーの、の
ぽい、で
かかとを合わせたらグー。
ひらいたらパー。
まえうしろでチョキという──
体をいっぱい使う遊び。
息を切らしておつかれに見えるから次はグーであろうか、
それとも大きな掛け声はパーの準備であろうかというかけひき。
そしてなんと──
スカートだからチョキははしたなくて無理だろうという予想をくつがえすおちびたち!
わらわはおぞうりが汚れたらいやだと思ってグーばかり。
なんだか楽しくてまあいいかとなるまでの間だけは、な。
兄じゃもわらわの元気を予想できたか?
知恵があればみんなを相手に全線全勝もできそうなのじゃ!
いまだ誰も見ぬその領域。
快挙を最初に成し遂げるのは、
おうちの誰であろうかの。