『月明り』
最近、小さい子たちは
何かいいことがたくさん続いたようで、
今日は疲れて早く眠ってしまった。
インクの発射音もステージを塗りつぶす音も
悲鳴も歓声も──
我が家では今、このひとときだけは
子供たちと暖かい布団で眠りについた。
冷たく乾く空気と
小腹がすいた時の温かい夜食と、
そして月の白い光が差す音までも響きそうな
静けさだけがこの夜の全てだ──
こんなに少し長く感じる夜のために
面白さで眠れなくなりそうな本や──
見たこともない世界に触れられる知的な本も
たくさん用意しておいたというのに、
いつのまにか読書にふさわしい秋は
次の季節にバトンを渡して、
すっかり寒さで
何もやる気がなくなってしまうことになっている──
こんな冬の日を見越して
春風は暖かい料理にぴったりの食材を
買い置きして──
吹雪はちょうどよく快適な気温で
過ごせる部屋を家の中に探し出し、
立夏は冬に食べるのにおいしいタイプのアイスを
冷凍庫から取り出すのだ──
知らないうちに
季節から取り残されて
読書をするどころか普通に過ごすのに重ね着を探すだけで
せいいっぱい。
毎年重ねているこの時期なのに
いつまでも寒さには慣れないな──
冬に向かうのを億劫に思う心が
早めの準備を忘れさせる効果をもたらすのだろうか──
みんな──寒さにいちいち文句を言いながら
準備をしているのは──
ちょっと楽しそうにも見えるのに。
厳しい季節を迎える分、
身を寄せ合って
決して離れないようにして──
いつか春を迎える時には
愛しい人たちと喜び合えるようにと願って
たくさんの準備をしていく──
今日の曇り空と
近づく本格的な冬の気配は
ずいぶん、多くのものを私たちに急かしているようだ。
心の準備とか──
こたつを出す分の空間の確保とか
いろいろだ。
冷たく静かに
ゆかいな考え事も──まあ仕方ないかというあきらめも
全てを抱いて
夜はまだ長く──続くのだ。