『春先の』
最近のお仕事。
日が出ているうちは
暖かいことが多くなったとはいえ、
まだまだ落ち着かない
季節の変わり目だから、
晩ごはんには
温かいものを。
お料理が得意なほうとは言えない
不器用な子でも、
小さい子に火を使わせるのはいけないので──
お姉さんになれば
することはたくさんあるの。
今日は火にかけたカレーを
しっかりかき混ぜ、
見守る係。
味を見て調節してもいいというけれど──
ホタ姉さまが見に来てくれるから、
私が手を加えることは何もないわ。
ゆっくりゆっくり、
おたまを手に
弱火にかけた鍋を見守る
根気だけが必要なお手伝い。
他にやることは
たくさんあるのも
間違いないんだけど、
ほら、季節が変わるから
タンスの中身もすっかり入れ替わるし、
進級の準備もあるし、
それなら本棚や
机の上だってそれなりにしなきゃ──
いつもばたばた忙しい大家族に、
また仕事が増える頃、
私は目を離したらいけない
火の番を任される。
カレーのいい匂い、
小学生たちの子が切った不揃いの大きさの野菜、
ぐつぐつ言う音と
とろけるルーが
まわる──
ぐるぐる──
みんなから託された責任があるから
簡単な作業でも──
手を抜いたりできないわ。
どこまでおいしくなるかははたして──私には責任は持てないけれど。
忙しい時に、
無心で続けられる
ちょっとした作業はいい気分転換になって、
人生に必要なうるおいなのだと──
お姉ちゃんたちから聞いたことがあるの。
地道であることに徹して
鍋をかき混ぜているときは、
そういう考え方もあるのかと
一瞬だけ納得する気がする時も
ないではないが──
私は冬服をしまい込み、
春の準備をする用事があるの。
ぐるぐると
みんなから任された仕事を果たしながら
その時を待っている──
ああ、のどかな陽気でも
人は忙しい。
私たちの冬の終わりには
カレーをかき混ぜる日がどうしてもやって来るの。