小雨

『ビビッド』
小雨です。
毎日寒い日が続いていますが
お兄ちゃんにお変わりはないでしょうか。
小雨は自分のことでせいいっぱいで
気が付かないことがたくさんあるのではと思います。
そう、この季節の
小雨は──
暖かい準備をして着込んでも
ちょっと外を歩いただけで
凍える指先、
葉の落ちた枝が心細くて
手を温めるために吐きかける息も
白くて冷たくて
胸の中も寂しい気持ち──
冬が来ただけで小さなころからいつも
一人でおびえているみたいな気がするの。
にじむ涙で震えるまつげも凍りついてしまうまえに
明かりを探して顔を上げると。
そうなのです。
この季節は気が付くと
あたりはイルミネーションが輝いて
真っ白だと思っていた町は
実はこんなにきれい。
小雨、クリスマスが来るのが楽しみになる
最近まで──
つい見落としがちだったの。
素敵な記念日を待っている人の気持ちが
こんなにまぶしく明るくて
震える小雨まで
照らしていたなんてこと。
あんまり輝きが
まばゆいので
照らされていたらいつも影みたいに縮こまる小雨は
いつのまにか消えていても仕方がない気もしますが
お兄ちゃん、小雨がまぶしい明かりに包まれて見えなくなっても
あんまり気にしないでね。
そういう生まれつき持った特徴なんです。
でも、隠れていたくて
それが心地よくても
家に帰ったら近づくパーティーの準備や
その日を楽しみにする子供たちに手を引っ張られて
派手な赤い衣装を次々と試着させられている自分に気が付く──
暖かな家族の景色です!
似合わないかもしれないけど
クリスマスだもの!
という声が聞こえてくるから
ついつられているかもしれない
最近の小雨。
お兄ちゃんが来てくれてから
クリスマスを楽しむみんなの顔も華やいでいるみたい。
楽しい日が早く来てほしいような
もう少しこんな時間を過ごしていたいような
でも真っ赤ですごい服は恥ずかしいような──
お兄ちゃんにも来てほしい衣装がたくさんあるって
お姉ちゃんたちはみんな言ってます。
小雨とおそろいだったりしたら──
その時は心の準備がいるから
早めに伝えてくださいね。
恥ずかしがりはすぐ逃げてしまいます──