綿雪

『ルート検索中』
今日のお天気はくもりのち雨。
一年生の子供たちは
雨が降る前に早く帰る約束。
ちょっとざんねん──
でも、しょうがないです。
もう一年も通ってずいぶん学校に慣れたつもりでいても
まだまだ小さくて
寒いのを忘れて遊んでしまう。
おまけに雨の中を帰るなんて
考えただけでもおそろしい──
ぞくぞくしてしまいます。
わかっているけど
それでも放課後は
お楽しみが多いから
やっぱり雨でなければな、と
ねずみ色の雲を見上げて思います。
ユキは知っているの。
このあいだのお休みの日、
通学路のどの辺りを通って
吹雪ちゃんが冒険に出かけたのか。
実は、おうちの地図を見れば
もうユキにはなんとなくわかる──
何度も通った道だもの。
帰り道の
あの曲がり角。
言われるまでその先に道があるなんて
考えたこともなく
家を急ぐだけだった
頭の上の高いミラーが目印の横道があります。
本当は雨でなくても
まだ一年生の子が寄り道をしたらいけないことだけど
通り過ぎた足元からも道は続いていて
そのうちお姉ちゃんたちがつれていってくれるって約束している。
家にまっすぐ帰るのが決まっている日ほど
ちょっと知らないところをのぞいてみて
おうちに持ちかえるお兄ちゃんとお話することが増えたらいいと
心がふらふら揺れるのは
とっても困ることですね。
でも、ユキの悪い悪い心の悪魔を
ムチも使わずにうまくなだめて
おとなしく──
すすんで檻の中に入るように仕向ける方法があるといいます。
冒険してみたい気持ちを指先であやつる
その方法とは!
そう、
お姉ちゃんたちのお買い物のお手伝い。
あったかくするのが一番で
おしゃれなんてできない雨の日だけど
濡れないように傘を差してついていって
やがてついに──
お兄ちゃんの面白いお話を持ち帰ることができる。
しっかりお手伝いをして
お買い物ができたことを
報告できる日になるように
傘と長靴に身を包んで出かけます。
お兄ちゃんも遅くならないように帰ってきてくれるといいな。
水たまりの街と
雨だれがしたたるお店のできごとを
帰ったらたくさん
お話しようね。