綿雪

『学び舎』
あれっ──
このご本は
お姉ちゃんのだれかが置いていったのでしょうか?
表紙は明るい笑顔をしたかわいい女の子。
だけどおうちのみんなと違って
とてもおしゃれできれいで
カラフルな服を上手に着ているの。
ごはんが楽しくてよくこぼしてしまうユキやお姉ちゃんたちとは
ちょっと違う──
しっかりした子なのかもしれないです。
これは、ファッション誌というものですね。
ユキもいつだったかお話を聞いたことがあります。
ママはお仕事の関係で
こういった本をたくさん持っているので
たまにみんなにプレゼントしてくれるのだそうですよ。
センス良く、かわいく育って
将来はママのお仕事を助ける立派な稼ぎ頭になってほしいのだと
そういうお話。
それはまったくユキには手が届かない世界のお話で──
芸能界のお仕事は体力が大事だというから。
体力だけでもダメだって
立夏お姉ちゃんが立候補をしても断られているみたいだけど
ユキ、立夏お姉ちゃんは明るくておしゃれでくじけなくて
とってもすごいと思うんだけどな。
この本の表紙に
ユキの知っている立夏ちゃんが登場することを考えると──
わあっ、なんだかはなばなしくて
ドキドキするような気持ちですね!
表紙には難しい言葉がたくさんで
ユキにはよくわからないですが
こんなにドキドキするのだから
とても大事なことなんだと思います。
えーと、なになに?
ふわカワ
めちゃモテコーデ。
必見のキメキメ
インスタ映えテクニック。
冬のトレンドはコレ!
あなた色にばっちり合わせて
視線を集めちゃお。
な、なるほど。
なるほどぉ……
まだまだ遠い世界のお話にしか見えないユキは子供すぎるけど
女の子はこういうお勉強をして
努力の積み重ねで
めちゃかわガールになっていくんですね。
でもふだんあんまり使わないですね……こういう言葉。
おしゃれが上手になったら
あまり体力に自信がなくても
お兄ちゃんはすてきな妹が出来たなって喜んでくれるかもしれない。
でも──ユキにはあんまり試せる機会もないし
いろいろ工夫するのだって自信がないな。
考えれば考えるほど
立夏お姉ちゃんははっきりしていて、自分のやりたいことに一生懸命ですごい!
鏡の前であれこれ試しては
おそるおそる見ていたユキを呼んで
ポーズをとって見せてくれたの。
ユキはただもう、拍手をするだけで精一杯。
自分で着るのは
ハロウィンの悪魔衣装だけでへとへとなの!
似合っているかどうか、かわいいかどうか考え出したら
物陰ばかりを探して隠れてばかり。
この本に出てくる遠い世界の人たちと
そのうち近づいて──
一歩くらいは近づいて。
すてきですねって言葉で伝えられるときもあるのでしょうか。
子供のおしゃれも、大人のおしゃれも似合わないユキ。
今日の一番の自慢は、たったひとつだけしかないけど。
みんながそばにいてくたから
元気に笑顔で過ごせたことです。