海晴

『スイートホーム』
とってもぽかぽか陽気だった
あの日の翌日。
お天気お姉さんだから
よく知っているはずなのに──
若いときしかできない
冬の装いに短めのスカート丈を合わせているのを
見たときに!
半袖で遊んでいる無邪気な妹たちに
あのきらきらした瞳に負けたらいけないと
決意した瞬間に!
たとえ寒さが戻ってくるとわかっていても
朝に来て行く服は
大胆に足を出したスタイルの他には
選べなかったの……
ああ、今日も寒かった!
それに比べたら
みんなで過ごすこの部屋の中は
世界中の誰が見ても認めるに違いない
この世界で一番の天国。
たとえ南の島とか
温泉のほうがいいよーとかいう声が聞こえても
余裕の笑顔だけで返事ができるの。
なにしろ部屋に入ったとたん氷の世界から蘇る
あのすばらしい暖房は効いているし
こたつもいい感じで
こたつ布団みんなで選んだ市松模様の優しいデザイン。
お兄ちゃんも一緒に入るんだから女の子っぽくなりすぎないように、
それにガーリーすぎるのが苦手な麗ちゃんとか
男の子みたいに元気な青空ちゃんでも
みんなが寒いお外から戻ったら全てを忘れて飛び込めるような魅惑の空間。
風邪の予防にうがい手洗いを忘れたら
聞きほれるくらいかわいく叱ってくれる子がたくさんいるし
しぶしぶ冷たい水できれいになってきたら
体を内側から温める美しい湯気と水面を揺らす飲み物で満たされたカップ
一人だけ座れる分の空いた場所に用意してくれてある。
あれ!
私のカップだ!
最近はコーンスープがお気に入り──
キッチンを預かる守り神たちはちゃんと覚えてくれているの!
それでもまだ何か足りないような気がしたら
そのへんから一人くらい引っ張ってきて膝に乗せたら
もう心も体も凍えた記憶なんて少しも残らない。
こんなに何もかも至れり尽くせりだと
なんだかばちが当たってしまいそう──
だけど全然
心配することはないのです。
だってここは私たちみんなですごす家。
家族の全員が幸せになっていいと決まっているの。
そうだ!
こんなに素敵な気分の時には──
なにかときめく──
気持ちのいい海風のような
甘い何かが追加であるともう何も言うことはないわ!
果たして、凍りつきそうな北風の吹く季節に
冷蔵庫にアイスは入っているのかしら。
突然の運命の分かれ道!
なかったら言いだしっぺが
みんなの希望を聞いて買出しに行かなくてはいけない。
荷物持ちを頼むのは長女の権限の範囲内ということで
優しい弟には許してもらえると思うんだけどな。