綿雪

『会いたい人は』
いつもの年なら今ごろは
真っ白な雪が溶けずに残ることもある
寒い裏山の風景も
今日は暖か。
固く身を縮めたつぼみが開く予感も
あるけれど──
もう少ししたらまた寒い日も来るみたいで
たぶんひとときの
大事なうれしい日差し。
だから今日こそ
めざしの頭と
食べ残しの骨を大事に持って
裏山のふもとまで
走っていかなくちゃ。
ユキと小さな子たちにとっては
冬の景色をさみしく歩く
しなやかな野良猫と仲良くなる
貴重なチャンス。
春風お姉ちゃんたちにとっては
溜まったゴミが減るいいタイミング。
だからユキたちは裏山へ急ぐの。
きのうの晩ごはんの残りは
エサがなくておなかをすかしている
かわいい猫たちのところへ──
届くようにと願う
小さな配達屋さんたちだったのですが
ときとき顔を合わせる猫たちが
今日はどこにもいないの。
季節はずれの暖かさにつられて
ふらりと──
遠くに行きたい気分になったのでしょうか。
名残惜しいけれど、ユキたちは
まだ小さな子供。
そう遠くへ追いかけていくわけには行きません。
お兄ちゃん、明日はもしかしたら
エサのお皿に置いていっためざしが
食べられてなくなっているでしょうか?
暖かい日も寒い夜も
ぽかぽかのお日様を待つ朝も
くるりくるりと入れ替わる季節。
立春を迎えて
お目当ての猫に会えなくて残念なユキは
日が暮れないうちにいい子でおうちに入ります。
早く帰ってくるようにって言われたんだもの──
きのうも煮込んで味がよくとおったあつあつおでんが
まだおかわりするくらい残っているって
お姉ちゃんたちが呼んでいたんだもの。
だから早く帰るのがきまり。
なんだか──青空ちゃんが待っていたおでんの日が
またすぐにやって来ましたね。
今度はすっかり残さずに食べきれるかな?
家族みんなでわいわい言う
にぎやかで好きなものをえらぶ協力が必要です。

取り合いになる大根がなくなってしまう前に
ユキはたまごを食べるね!