『まごころ』
日頃の感謝の気持ちに、
とか──
あるいは
おすすめを味わってもらいたいから、
半分こをお願いするつもりだから、
などなど
バレンタインデーにチョコレートをあげる理由は
人それぞれで
いろいろあるらしい。
もちろん
女の子から気持ちを伝える
勇気を出すチャンス──
という意味もあるという。
おそらく私も
チョコレートを用意するつもりだけど
いったいどういう気持ちで?
なぜか自分の行動が説明できなくて
落ち着かなくなる。
みんながあげるから──
本当はただそれだけの理由で
かまわないのかもしれない。
でも、だけど……
私の気持ちはそうなのかな?
いつも頼りにしているはずの
そこそこ鍛えたつもりの胸から奥のほうに聞いても
すっきりした答えは返ってこない。
そんな時に聞いた
妹たちの会話は
あげたいからあげるんだ、
それだけ!
ごちゃごちゃ考える意味はないって──
そう言ってた。
それもありなのか──
じゃあ、私も突き詰めて考えなくても
慣れない頭を使わなくたっていいのかもしれないな。
だけど、それを教えてくれた麗の場合は
いちばんあげたい人にはあげられないんだそうだ──
いつもがんばって働いている頼もしいその人は
2月14日も早朝から深夜まで営業中。
小学生の麗が眠ってしまった後もレールを走る。
そもそもチョコレートを食べるかどうかも
議論の余地があるという。
だから近くでがんばっている人が
そのうち同じくらいがんばってレールを走るかもしれないから
期待を込めて──
という考えはないでもないらしい。
ともかく重要な買出しと試作の機会となる三連休は
雪の予報と寒さに注意──
私はみんなを守るのが先で
他の子とを考える余裕がない場合もあるだろう。
だからきっと私には
簡単な答えだけが
ひとつあればそれでいい──
他に欲しいものは
贈ると決めたからにはそれなりに納得の行くチョコレートと
麗の相談に気の利いた答えを返せる知恵と言うことになるけれど
ふたつめのほうはどうも無理なので
話を聞いてやれる時間だけが現実的な線かな──
それくらいならなんとか作っていけると思う。
もうすぐ迎える日もこのくらいの調子でうまくやっていけるかな?
なるべくうまくいくといいなと
緊張感に似た気持ちだけは
今のところ確かにあるのを感じている。