綿雪

『サイレントナイト』
夜の窓際に近づくと
透明なガラスの向こう側を
冬の寒さが包んでいるのがわかるの。
カーテンの隙間から見える星がきれいで
明るく瞬いて──
あの星の上も
おうちのお部屋のように暖かいのかなと思います。
でもあまり外の寒さは
子供の体にはいけないの。
ユキは元気なほうではないし
楽しいことはこれからたくさんあるのだから
つい気がつかないうちに
風邪が忍び寄ってしまう。
お兄ちゃんはクリスマスや年越しや紅白が近いからといって
はしゃいだりしすぎていませんか?
それはまるで体の弱いユキが
いけないとわかって
あと少しの時間だと言いながら冷たい窓に張り付いているのと
近いかもしれない
いけない子のお話。
反省が必要なのに
それでも今だけはそうしていたい気持ちなのだと
胸の中の声に答えて──
大丈夫。
無理はしませんみたいに。
そんなことをしていたらわるい!
しかってあげないと、
窓に乗せた手が芯まで冷えている子を──
きらきら輝く瞳を乗せたほっぺたが
興奮と寒さのどっちで赤くなっているのかよくわからない小さい子を。
だけど今だけは──
クリスマスが近づく頃に
ぐっと寒くなるという予報を聞いたら
まるで今すぐ見ているそばで
星空を飾り
街のイルミネーションに真っ白な彩りを添える雪が
ゆっくりと──
降りて来そうな気がして
すぐ見える場所で待っている子を
本当はユキも
お兄ちゃんも
暖かい上着を一枚着せてあげながら
家の中へ連れ戻してあげなくちゃいけない。
見上げる視線の輝きを少し分けてもらうみたいに
肩に手を乗せて
大好きなみんながいるところへ
呼んであげるの。
今日が無理でも
明日からユキもそうできたらと思いながら
窓辺に立っている──
そういう季節が今なんです。