綿雪

『ぷるぷるダンス』
寒い日は
ぷるぷる。
足元から静かに近づいてくる冷たい空気。
うーっ!
寒くて震えちゃう!
という時、
小さなマリーちゃんやさくらちゃん、虹子ちゃんたちは
お姉ちゃんたちが腕を擦って縮こまったりするのを真似て
暖かくなる踊りをするんだそうです。
さむいさむいよーって
ほっぺたをこすってあげたり
おしくらまんじゅうをしたりするんですよ。
お外の雨を見に行っては
ぷるぷる震えながら帰ってくると、
いつも新しい踊りを身につけているんです。
ユキは風邪を引かないように
いつも暖かくしていないとだから
震える寒さを経験したことはないの。
みんながこんなふうに楽しくできるのが
寒い冬の一日なんだとしたら
ユキはずっとこんなふうでいてほしくなってしまう。
そして、みんなと楽しい毎日を過ごして大人になって
体が少し丈夫になったら
寒いお外へ出て行くの。
たぶん最初は──いつでも暖かい手をにぎっていられるように
誰かについてきてほしいとお願いしないといけないのでしょうね。
大きくて、暖かい手と
いつでもおしくらまんじゅうができる大好きな人がいれば
これからずっと冬を迎えるのが怖くないの。
その時に頼りにするのは氷柱お姉ちゃんなのかな。
あっ、そうだ!
ユキは思い出しました。
お兄ちゃんには伝えておいたほうがいいと思うの。
氷柱お姉ちゃんがとても怒っている原因──
もうすぐハロウィンの楽しい日なので
ホタお姉ちゃんは、下がっていく気温に合わせて衣装の作り直し。
そのため、時間がなくても間に合うように
別のイベントで作りかけになっていた服を持ってきたり
今までなんとなく使う機会がなかったアイデアなどを引っ張り出して、
そうすると、ホタお姉ちゃんの特に好きなかわいらしい着替えばかりが並ぶの。
お人形のよう──
絵本の中のよう──
小さい頃から変わらないままの趣味なんですって。
それを見で青ざめた氷柱お姉ちゃんは
ホタお姉ちゃんのひとこと、
お兄ちゃんがこれとかあれをかわいいって言ってくれた!
というのを聞いて
かわいいハロウィンになりそうなのはお兄ちゃんのせいだと思ってしまったみたい。
それで怒っているんですよ。
ええーっ、ておどろくでしょう?
お兄ちゃんはあまり関係ないじゃないですか!
それに、ちょっと苦手なんだとしたら
ちゃんとお兄ちゃんにお話をしたらいいのに
すねてぷいってしているんです。
いけないですよね!
だからユキは
まったく氷柱お姉ちゃんはどうしちゃったのかなと不思議で。
お兄ちゃんに良くないことをしています! って
どういうことなのか聞いてみたいの。
もし、氷柱お姉ちゃんが悪いことをしているなら
ユキがちょっと怒っただけで
ぷるぷるって
寒くないお部屋でも怖くて震えてしまうかもしれないですね。
えへへ──
仲良くしてくださいねって言ってみるの。
ユキのやさしい氷柱お姉ちゃんならすぐわかってくれるはずです。